「住民投票」ってニュースでたまに聞くけれど、いったいどういうときに実施されて、どんな条件で投票結果が実現されるんだろう?
政治の学び直しに役立つと話題の書籍『今さら聞けない!政治のキホンが2時間で全部頭に入る』(馬屋原吉博著、すばる舎)から、著者で中学受験の社会科の大人気講師・馬屋原吉博先生のわかりやすい解説でお伝えする。
「住民投票」を実施する主なケースとは?
選挙で選ばれた代表者が政治を進める「間接民主制」が徹底されている日本では、私たち国民が「内閣総辞職」や「衆議院の解散」を求めるための制度は用意されていません。
しかし地方では「首長や地方議会の議員の辞職」や「地方議会の解散」を請求することができます。これを「リコール」と呼びます。
解職や解散を請求するためには、原則として、有権者の3分の1の署名を集めなければなりません。有権者が30万人いる地方公共団体だと、10万人分の署名を集める必要がありますので、そう簡単に集まるものではありません。
また「署名が集まったからといってクビ!」というわけでもありません。集められた署名は、いったん地方公共団体の「選挙管理委員会」に提出され、その後「住民投票」が行われます。
この住民投票で、解職や解散に賛成する表が有効投票の過半数に至った場合、そのリコールは成立します。かなり前の話ですが、2011年、政令指定都市である名古屋市で議会の解散請求が成立したときは大きな話題となりました。
18歳未満の人や外国人が投票できる住民投票もある
解散請求や解職請求のほかにも、住民投票が実施されるケースがいくつかあります。
① 国会が特定の地方公共団体のみを対象とした特別法を制定する
② 首長や議員の解職、議会の解散請求後
③ 市町村の合併協議会の設置を求める
④ 特定の問題について条例を制定して住民の意思を問う
⑤ 大都市地域特別区設置法に基づく
憲法が規定している住民投票は、上記の5つです。
国会が特定の地方公共団体にのみ適用される特別法(一例は、広島平和記念都市建設法)を制定するときは、その地方自治体の住民による住民投票の結果、過半数の賛成がなければ制定できない、とされています。ただ、この住民投票は1952年以降、実施されていません。
近年増えてきているのは、④の、特定の議題について住民の意思を問うために、議会が定めた条例に基づいて行われる住民投票です。
1980年代から90年代にかけては、在日米軍や原子力発電所に関する議題で行われることが多かったようですが、2000年代になると市町村合併の是非を巡って行われることが増えました。
この住民投票は「公職選挙法」による制限を受けないため、条例次第では18歳未満の人や外国人に投票権が与えられることもあります。ただ、このタイプの住民投票には法的拘束力がないため、民意が無視されるケースも散見されます。
近年では「大阪都構想」での投票が有名
ほかにも、2012年に成立した「大都市地域特別区設置法」に基づいて、政令指定都市の廃止などの是非を問う住民投票(⑤)があります。こちらは2015年に大阪市で実施されました。
いわゆる「大阪都構想」を前に進めるために、大阪市を5つの特別区に分割することの是非を問う住民投票となりました。この住民投票は法的拘束力を持つものであり、僅差で否決されたことを受けて、当時の橋下徹大阪市長は引退を表明しました。
記事中に、「解職」を「会食」、「協議会」を「驚異会」との誤記がありました。修正してお詫びいたします。(2023年11月13日14時、書籍オンライン編集部)