第二次安倍内閣は、憲法第9条の改正に言及していたが、いったい憲法はどのようなプロセスを経て改正できるのだろうか? 政治の学び直しに役立つと話題の書籍『今さら聞けない!政治のキホンが2時間で全部頭に入る』(馬屋原吉博著、すばる舎)から、著者で中学受験の社会科の大人気講師・馬屋原吉博先生のわかりやすい解説を紹介する。

【政治の学び直し】憲法を改正できるのは国会? 総理大臣? 天皇? 国民?写真はイメージです(Photo: Adobe Stock)

憲法改正における国会の役割

 憲法の改正の仕方を定めているのは憲法第96条です。

 実際には憲法審査会による事前の手続きが必要となりますが、96条は憲法改正の最初のステップを「国会による憲法改正の発議」としています。

 憲法改正の発議が成立する条件は、衆参それぞれの議院において「総議員の3分の2以上」の議員が賛成することです。日本国憲法が施行されて以来、実現したことがない高いハードルです。

 ここで正しく理解しておきたいのは、国会がこの高いハードルを越え、憲法改正の発議が実現したからといって、憲法が改正されるわけではないというところです。発議は、あくまで「憲法を改正しませんか?」という国民への提案にすぎません。

 最高法規である憲法を改正できるのは国民だけです。

「この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票に置いて、その過半数の賛成を必要とする。」と規定しています。「何の過半数なのか」は規定されていません。

 2007年、第1次安部内閣のときに、国民投票の具体的な方法を規定する「国民投票法」が制定され、この部分は「有効投票の過半数」と決められました。有効投票とは、投票された票の数から白紙票などの無効票の数を引いたものです。

 つまり、「18歳以上の選挙権を持つ人すべての過半数」ではなく、正しく投票した人の過半数が賛成すればよい、ということになります。

国民投票は憲法改正のときだけ

 国会が憲法改正の発議をすると、60日以上180日以内の間に国民投票が行われ、そこで「有効投票の過半数」の国民が賛成すれば、改正が決まります。最後の手続きとして、天皇が国民の名において公布します。

 2016年にイギリスが国民投票でEU離脱を決めたように、世界には国の行く末を左右する大切なことを国民投票で決めていく国もあります。一見すると、そちらのほうがより民主主義の精神に則っているように感じられますが、国民投票には国民投票で、「流行に左右されやすい」「個々の国民にとっはて不利だが国民全体には有益な決断がなされにくい」といったデメリットがあります。

 日本国憲法は「正当に選挙された代表者」が政治を進める「間接民主制」を徹底しており、あくまで国民投票は憲法改正の発議がなされた際にのみ行われることになっています。