日本には「世襲政治家」が多すぎる、ビジネス界からの転身が少ない根本理由Photo:Flamiaki/Gettyimages

昨今は「世襲政治家」への批判が再燃している。自身のホームページに「家系図」を掲載した岸信千代氏、「公用車で観光」疑惑が浮上した岸田翔太郎氏などの言動が目立つからだ。かつては世襲体質を変えようと、各政党が「候補者の公募」に力を入れていた時期もあったが、結果的に「小泉チルドレン」「小沢ガールズ」などと呼ばれた新人は失言や問題行動を繰り返した。なぜ、ビジネス界で活躍する優秀な人材は、あまり政界に入ってこないのだろうか。その根本的要因を考察する。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

岸信千代氏に岸田翔太郎氏…
「政治家の世襲」が批判の的に

 議員の辞職・死去などに伴って、欠員を補充するための「補欠選挙」が4月23日に実施される。衆議院で補欠選挙を行う選挙区は、千葉5区、和歌山1区、山口2区・4区の4つである。

 このうち衆議院山口2区の補欠選挙は、岸信夫・前防衛相の辞職に伴うものだ。自民党は公認候補として岸氏の長男・信千代氏を擁立している。

 ところが今年2月、信千代氏には思わぬ「逆風」が吹いた。

 信千代氏は公式ホームページを開設した際、自身のプロフィールとともに、政界の“重鎮”である親族の名前を列挙した家系図を掲載した。それが、堂々と「世襲」をアピールしていると厳しく批判されたのだ。

 家系図に名前が記された親族は、父の信夫氏、伯父の安倍晋三氏、祖父の晋太郎氏、曽祖父の安倍寛氏、岸信介氏、曽祖叔父の佐藤栄作氏の6人である。

 補欠選挙の話題からは離れるが、世襲といえば、岸田文雄首相による息子・翔太郎氏の“優遇”も記憶に新しい。

 岸田首相は翔太郎氏を首相秘書官に起用し、欧米5カ国訪問時に帯同させたのだが、翔太郎氏には公用車で観光していた疑惑が浮上。首相の息子という「特権」を利用したと批判された(本連載第324回)。「政治家の世襲」に対する批判は昔からあるが、ここに来て再燃している。

「政治家の世襲」とは、親は祖父母など親族が作った「三バン」(地盤、かばん、看板)と呼ばれるものを継承して政治活動を行うことをいう。また、三バンを引き継いでいない場合でも、親子などの親族関係があれば、世襲とみなされる場合もある。

 自民党国会議員のおおむね3割が世襲議員である。選挙のたびにその割合は上下する。自民党が選挙に敗れたときに、世襲議員の割合が約4割に上がることもある。世襲議員は選挙において「逆風」に左右されない強さがあるとされる。