クリスマスなど、イベントが続く季節だ。楽しい思い出に水を差さないよう、子供の窒息・誤嚥に気をつけたい。
日本小児科学会は9月1日、ポップコーンの「未破裂」コーンの誤嚥による窒息事例の傷害速報を発表。紹介されたのは、大型商業施設のゲームセンターに両親と遊びに来ていた1歳9カ月の女の子に起こった事例だ。
その女の子は、自動販売機で紙コップ入りのポップコーンを買ってもらい、母親が押すショッピングカートに乗り、容器を自分で持ってポップコーンを食べていた。
残り少なくなったところで、底に残っていたポップコーンを食べようとして、ちょうど水を飲むように紙コップを傾け、一気に「飲もう」としたらしい。子供にありがちな行動である。
その直後に子供がむせたため、母親が背中をたたいて、異物を取りのぞこうとした。数粒の未破裂コーンが吐き出されたものの、間もなく顔色が悪くなり、全身が脱力して、呼びかけや刺激に反応しなくなったという。
この事例では運よく、通りすがりの一般人が心肺蘇生を行い、1分後に反応が戻ったため、すぐに緊急搬送が行われた。
医療機関に到着したのは、蘇生から1時間を過ぎた頃だったが、検査で気管支内に残っていた未破裂コーンが見つかり、結石回収用カテーテルなどで無事に回収できた。その後、集中治療を経て、13日目に後遺症もなく退院している。
同学会の「こどもの生活環境改善委員会」は、ポップコーンは破裂、未破裂を問わず窒息リスクの高い食品であり、「4歳未満の子供の手が届かない所に保管する」という米国小児科学会の推奨文を引用。改めて「4歳未満の子供にはポップコーンを与えない」よう注意を促している。
日本では豆菓子やナッツ類の誤嚥・窒息による子供の死亡事故が多く、消費者庁が「5歳以下の子供に食べさせない」よう呼びかけてきた。今回、ポップコーンという新手がでてきたわけだ。
とにかく奥歯で食物を嚙み砕く力が弱いうちは「乾いて、硬くて、丸いもの」に注意が必要である。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)