唾液はどこから出ているのか?、目の動きをコントロールする不思議な力、人が死ぬ最大の要因、おならはなにでできているか?、「深部感覚」はすごい…。人体の構造は、美しくてよくできている――。外科医けいゆうとして、ブログ累計1000万PV超、Twitter(外科医けいゆう)アカウント10万人超のフォロワーを持つ著者が、人体の知識、医学の偉人の物語、ウイルスや細菌の発見やワクチン開発のエピソード、現代医療にまつわる意外な常識などを紹介し、人体の面白さ、医学の奥深さを伝える『すばらしい人体』が発刊された。坂井建雄氏(解剖学者、順天堂大学教授)「まだまだ人体は謎だらけである。本書は、人体と医学についてのさまざまな知見について、魅力的な話題を提供しながら読者を奥深い世界へと導く」と絶賛されている。今回は著者がダイヤモンド・オンラインに書き下ろした原稿をお届けする。
年末年始の帰省に潜む誤飲のリスク
毎年、年末年始の休暇には多くの人が実家に帰省する。
久しぶりに家族で再会する時間は貴重だ。孫と過ごせる日を心待ちにしている高齢者も多いだろう。
だが、こうした環境の変化が生む健康上のリスクには注意が必要である。
注意したい誤飲リスク
普段から幼い子どもと生活を共にする人は、子どもが誤って飲み込むリスクのあるものを手の届くところに置かないよう重々注意している。
だが、日頃大人だけで生活する人にとっては、子どもの誤飲リスクは思わぬ落とし穴になる。特に、幼い子どもが久しぶりに祖父母の家に行く際は注意が必要だ。
子どもの誤飲で最も多いのが、たばこである。
2016年の調査では、子ども誤飲事故の約20%をたばこが占める(1)。6ヶ月~11ヶ月の子どもに最も多く、次に多いのが12~17ヶ月の子どもだ。
まだ判断力は未熟である反面、ハイハイでの移動や自力での歩行ができるようになり、行動範囲が急速に広がる時期である。
未使用のタバコのほか、使用後の吸い殻や、吸い殻の入った液などの誤飲例もあるため、注意が必要だ。
薬にも注意
子どもの誤飲で次に多いのが医薬品で、これが14.8%を占める(1)。
祖父母世代の高齢者は、何らかの持病で薬を内服していることが多い。
降圧薬や睡眠薬など、様々な錠剤がテーブルの上に置かれていたり、床に落ちていたりすることは少なからずあるだろう。
幼い子どもがお菓子などと間違えて飲み込み、病院に搬送されるケースは多いのだ。
次いで3番目に多いのはプラスチック製品で、9.9%である。他にも、ボタン電池や洗剤、防虫剤など、帰省先には様々な危険が潜んでいる。
幼い子どもと一緒に帰省する際は、こうしたリスクを事前に排除しておくことが大切だ。
誤飲の対処法
なお、誤飲が起こった場合の対処法については、消費者庁がホームページで詳細に解説している(2)。
たばこ、医薬品、防虫剤、洗剤、ボタン電池など、誤飲したものの種類別に必要な対応がまとめられていて分かりやすい。
いずれにも共通するのは「吐かせずに病院へ」という点だ。
加えて、「何を飲んだか」「いつ飲んだか」「どれだけの量を飲んだか」など、病院で説明すべきポイントがまとめられている。
可能なら、誤飲したものの容器や袋などを持っていくことも大切だ。何を誤飲したかによって、医療機関での対処法も異なるからである。
ぜひご参照いただき、事故のない楽しい年末年始になればと願うばかりである。
【参考文献】
(1) https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=9316
(2) https://www.caa.go.jp/policies/future/project/project_005/investigation/
(※本原稿は『すばらしい人体』の著者山本健人氏による書き下ろしです)