「メモ=情報を忘れないために書くもの」と思ってはいないだろうか? 実はメモは、「考えること」を助ける強力な武器にもなる。そのノウハウが紹介されているのが『考える人のメモの技術』。著者の下地寛也氏は日本で一番ノートを売る会社・コクヨに長年勤務し、書くことに真摯に向き合ってきた。本書にはそんな下地氏が、一流のビジネスパーソン・クリエイターたちのメモを収集・分析し、発見した「書くこと」を通して「自分なりの答え」を出す方法が紹介されている。本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、「メモの技術」とは何かについて紹介していく。(構成:長沼良和)
メモは「気づき」を書き加えれば自分ごとになる
情報収集のためにメモをとって、書いたまま放置してしまうことはないだろうか。
せっかく良い情報だと思ってメモしたとしても、これではまったく生かせていないことになる。
では、どうすればメモした情報を生かせるだろう?
そのコツは、メモするときに自分が感じた「気づき」も一緒に書き加えることだ。
実はこの外から得られた情報に対する自分なりの解釈こそが、情報を自分ごとにする変換装置の役割を果たします。(P.133-134)
気づきを加えることで、初めてメモした情報を自分ごととして捉えられるようになる。
外部にあった情報を内側から出てきた気づきと融合することで、自分のものにするのだ。
「客観的な事実」と「主観的な解釈」を組み合わせる
たくさんメモをしているけれど、アウトプットにつながっていない場合は、取り入れた情報をそのまま持っているのが原因である。
その情報を見て、自分がどう思ってどう解釈したのかというところまで深掘りしなければならない。
自分の外にある客観的な事実に対して、主観的な解釈による意味づけをすることで新たな思考パターンを得られるわけです。(P.134)
「得た情報」と「気づき」を足せば“自分ごと”になる
必ずしも収集した情報は、すべてに気づきを書く必要はない。
いくつかまとめた情報に1~2つの気づきを入れるのでも構わない。
書き方に制限はないので、自由に気づきを入れていってほしい。
ただ、得た情報と気づきが判別できるように「▶︎」を入れておくと後から見直した時にわかりやすいのでおすすめである。
▶︎相手のメリットを入れるとスマートに誘導できる(P.136)
メモに書いた情報の後に気づいたことを書くと、その情報は自分ごとになるのだ。
「気づき」は一言感想を書くところから
メモによって集めた情報に対して、気づきがあるかはっきりしないかもしれない。
「気づき」というと、ピンとひらめいたことや思いついたアイデアのような高尚なものをイメージするかもしれない。
しかし、そんなに難しいことではない。メモした時に「なぜそれをメモしようと思ったのか」という感じたことを書けばいいのだ。
情報に対して、「一言感想を書く」といえばわかりやすいだろうか。例えば、以下のように書くといい。
▶︎夏場はいつも目標未達になる、攻め方を変えるべきか?
・加藤さんにサポートしてもらった資料、上司にOKもらう
▶︎嬉しい。助けてもらうと感激は2倍!
・サラリーマン川柳「効率化 提案するため 日々残業」
▶︎批判もユーモアがあると受け取りやすい
・平等院鳳凰堂の翼廊には実用性がない
▶︎美しさのための無駄にも意味がある
・娘、自分でご褒美アイスを買い、テスト赤点なら母に食べてと言う
▶︎飴とムチを自分で準備、すごい!(P.138-139)
単に情報をインプットしているだけでなく、気づきや感想を加えるだけで、自分自身で考えていることがわかる。
言語化の習慣が「あなたの言葉」に力を与える
メモに気づきを書く癖をつけておくと、思っていることを言葉にする力、つまり「コメント力」が身につく。
普段の会話の中や、意見を求められた時に気の利いたことが言えなくて悔しい思いをしたことがあるかもしれない。
それは、おそらく何も考えていないというよりは、単に思っていることや感じていることを言語化する習慣がないだけなのである。
そんなとき、メモした情報に対して、自分の考えたことを言葉にして書くようにすると、言葉にして思いを伝えるコメント力がついていくはずだ。
おすすめの方法なので、ぜひ試してみてほしい。