「メモ=情報を忘れないために書くもの」と思ってはいないだろうか? 実はメモは、「考えること」を助ける強力な武器にもなる。そのノウハウが紹介されているのが『考える人のメモの技術』。著者の下地寛也氏は日本で一番ノートを売る会社・コクヨに長年勤務し、書くことに真摯に向き合ってきた。本書にはそんな下地氏が、一流のビジネスパーソン・クリエイターたちのメモを収集・分析し、発見した「書くこと」を通して「自分なりの答え」を出す方法が紹介されている。本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、「メモの技術」とは何かについて紹介していく。(構成:長沼良和)
学校では教えてくれないメモの技術
メモはとるけれど、結局それを活かせていない。後からメモを見返してみると、たいしたことが書かれていない……。こんな人が結構多いのではないだろうか。
メモ帳を購入し、カバンにしのばせて何かあったら書き込もうと思ってはいる。しかし、結局広げることもなくただ入れっぱなしになっている。そういうケースも多いみたいだ。
実際のところ、メモを書く方法はどこでも習わないのだから、仕方のないことなのかもしれない。
学校で教わるメモのコツといえば、板書のとり方くらいだろう。
なんでもメモればいいわけではない
社会に出て仕事をするときには、「とりあえずなんでもメモっておけば良いだろう」と考えている人もいるかもしれない。
私自身、新卒で入った会社ではなんでもメモしていた。しかし、せっかくメモしたことも見直すことはなく、書きっぱなしで仕事に生かされることはなかった。
自分らしい成果を上げるためには、「なんでも、とにかくメモしておこう」というやり方は非効率なのである。
効率的にメモをとるにはコツがあるのだ。
メモをとるときに発生する3つの問題
正しいメモの流れを意識していくと、いくつか問題が見えてくる。
あふれる情報の中から何をメモするのか選べない。大切な情報があっても気づかずに目の前を素通りしてしまう。
問題② どう書くべきか?
情報を自分ごととして取り込みたいが、一言一句漏らさず書くべきか、自分なりの解釈を加えて書けばいいのか迷ってしまう。
問題③ どう使うのか?
情報を活用してどうアウトプットを生み出すのか、人とは違う自分らしさをどう盛り込めばいいのかわからない。(P.34-35)
これらの問題に心当たりがある人は多いのではないだろうか。
「メモの技術」を身につければ、これらの問題が解決し、それによりメモすることが楽しくなって長続きもするはずである。
問題① 「何を書くべきか?」
日常生活の中で、何でもかんでもメモしていたけれど、だんだんメモする意味がわからなくなってやめてしまった経験はないだろうか。
それは「メモの基準」がないから起こることである。
自分にとって役立つ情報や興味のある情報はなんなのか考えてみよう。
自分の視点を持っていないと、一部は詳細にメモされているが、別の箇所はアバウトなものしか書かれていなくて、読み直しても「なんだこれ?」ということになってしまう。
では、「メモの基準」はどんなものなのかというと、「どのようなことをメモしたいか」ということをメモの最初に書いておくのである。
例えば、メモの基準は大きく分けて2つある。
・活用したい情報
・面白いと感じる情報
「活用したい情報」は、生活や仕事、趣味等に関連して試してみたり、参考にしたりしたいという情報である。
「面白いと感じる情報」は、自分の感性や嗜好に合う情報だ。
すぐに使えるものではないけれど、「これは面白い」と思ったことを蓄積しておくことで「自分らしさ」を磨ける。
問題② 「どう書くべきか?」
メモしても、結局読み返すことなくそのまま忘れてしまうことが多い。
そうなる理由は、メモが「自分ごと」になっていないのが原因である。
得られた情報を完璧にメモしても、単に外部の情報をそのまま写しただけだ。
そこに自分なりの解釈を気づきとして一言加える。これにより、インプットした情報が初めて自分のものになるのである。
知識の一部として自分の中に取り込まれ、初めて活用できる状態になるのである。
問題③ 「どう使うのか?」
メモした情報を活用して、どのようにアウトプットを生み出すかについては、ほとんどの人ができていないのではないだろうか。
それ以前に「メモはインプットするものだ」という認識で止まっているかもしれない。
インプットした情報をすべて書き出して「見える化」しよう。
その上で、課題を整理して本質を探っていくことでアウトプットにつながっていくのである。
メモの本当の力は、メモでインプットしたものを整理して、どのように行動するかを具体的にはっきりさせることである。
そこからアウトプットを生み出していけるようになる。