フィリピン経済は内需拡大で底入れも、成長率「6~7%目標」達成は微妙Photo:PIXTA

在庫調整の進展に加え、インフレ鈍化と海外移民労働者からの送金に支えられた堅調な消費と設備投資の底堅さでフィリピン経済は底入れしつつある。ただ、政府が目標とする2023年の成長率6~7%の達成はハードルが高いだろう。(第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 西濵 徹)

2022年は46年ぶりの高い成長も
4~6月期は予想外のマイナス成長

 フィリピン経済を巡って、昨年は商品市況高騰や米ドル高ペソ安などを受けたインフレに加え、中央銀行による物価と為替の安定を目的とする継続的な利上げが景気の足かせとなることが懸念された。

 しかし、コロナ禍からの経済活動正常化に伴うペントアップディマンド(繰り越し需要)の発現に加え、欧米など主要国を中心とする世界経済の回復が外需を押し上げたことで、昨年の経済成長率は46年ぶりの高い伸びとなり、大きく上振れした。

 他方、年明け以降はペントアップディマンドが一巡するなかで、中銀による利上げの累積効果が表れてきた。インフレは頭打ちに転じるも依然として高水準で推移し、実質購買力に下押し圧力がかかっている。加えて、中国の景気減速の動きが外需の足かせとなったこともあり、一転して景気は勢いを欠く推移をみせてきた。

 4~6月期の実質GDP(国内総生産)成長率が予想外のマイナスとなるなど景気はつまずきをみせた。しかし、在庫調整が大きく進んだことが景気の下振れ要因となっており、その点を考慮すれば過度に悲観する必要性は低いと判断できる。

 次ページ以降、フィリピン経済の底入れの動きを検証していく。