選挙活動を行うボンボン・マルコス氏 Photo by Takehiro Masutomo選挙活動を行うボンボン・マルコス氏 Photo by Takehiro Masutomo

5月9日に行われたフィリピン大統領選挙で、フェルディナンド・マルコス・ジュニア氏(通称「ボンボン・マルコス」、64歳)が下馬評通り2位に圧倒的な差をつけて当選確実となった。名前を見て分かる通り、独裁者・フェルディナンド・マルコス元大統領の息子である。10人で争う混戦になったものの、1986年の政変後に行われた選挙では初の過半数の得票となったとみられる。タッグを組んで参戦したドゥテルテ大統領の娘、サラ・ドゥテルテ氏(43歳)も順当に副大統領の座を射止めた。フィリピンの正副大統領は別々に選出されるのだが、ペアでの当選は異例のことで、フィリピン全体として大きな方向性を示したことになる。(中国・ASEAN専門ジャーナリスト 舛友雄大)

独裁者マルコスの息子は、まさに「ボンボン」

 父マルコス氏は1965年にフィリピン大統領に就任。1972年から戒厳令を敷き、権力を握った約20年の間に、少なくとも数千人の市民が殺害・拷問された。その独裁者マルコスの息子として早くから政界入りしたボンボン氏は23歳の若さで北イロコス州の副知事に就任、1983年には知事に昇格した。

 しかし、1986年マルコス政権に対する「ピープルパワー革命」が起きると、一家は米国ハワイへ亡命する運命に。ボンボン氏の母に当たるイメルダ夫人の靴コレクションに代表される不正蓄財は世界的な話題となった。

 地元の名門フィリピン大学を卒業し弁護士となったマルコス元大統領と違いボンボン氏はまさに日本語で言うところの「ボンボン」といえる存在だ。

 彼は英オックスフォード大学を中退。その後、米の名門ペンシルベニア大学のビジネススクールにも通ったが、こちらも課程修了には至らなかった。