いくつ並べても決め手にならないポイント
これは柔道の“有効ポイント”に似ています。柔道では、きれいに投げると“一本勝ち”します。少し形が崩れると“技あり”で、その“技あり”を二つ取ると“合わせ技一本”になり、試合が終わります。つまり、決定打になるわけです。
ですが、“技あり”より下の“有効”は違います。“有効”は何個ポイントをとっても技ありには昇格せず、試合が終わらないのです。「決め手」にならないのです。
勝負が判定に持ち込まれた場合、有効ポイントの数で勝敗が決まります。「どちらか選べと言われたら、ポイントが多い方を選ぶ」ということです。でもそれだけでは勝敗が決まらない、決定打にはならないのです。
ふと振り返ってみると、この「ないよりは、あった方がいいもの」を並べている商品がたくさん目につきます。こんなことにも使えます、こんな便利な使い方もできますとうたっていますが、そもそもそれは「必要不可欠ではない」のです。これではお客さんに買ってもらうことはできませんね。
【プロが陥るワナ3】
ニーズ・ウォンツを考えてしまう
マーケティングを勉強されている方は、「消費者のニーズやウォンツに応えることが、売れる商品をつくるポイント」というフレーズを耳にしたことがあるでしょう。ですが、その「ニーズ」や「ウォンツ」という言葉で考えると、間違った方向に行ってしまいがちで、注意が必要です。
というよりぼくは、そのニーズやウォンツを追っかけているので、売れない商品になってしまう、と考えています。消費者のニーズやウォンツを満たせば、相手がほしがるものを提供できるという発想は、かつては有効だったと思います。ですが、今では少し修正が必要な捉え方です。
たしかに相手のニーズ(必要性)やウォンツ(欲求)を叶えようとする発想は大切で、少なくとも自分目線で「この商品は素晴らしいスペックです」と語るよりはいいでしょう。
ただ注意が必要なのは、ニーズやウォンツに意味があるのは、そのニーズ・ウォンツが未解決の場合に限る、ということです。たとえば、「空腹を満たしたい」というニーズがあります。このニーズは人間であれば全員持っていますね。日本人約1億3000万の「空腹を満たいしたいニーズ」が毎日、しかも1日何回かあるわけです。膨大なニーズです。
では、ここに膨大なニーズがあるので、ぼくはこのニーズを満たすレストランを開業しようと考えました。……では果たして、ぼくのレストランビジネスは成功するでしょうか?
成功する可能性は低いです。みなさんもそう感じたのではないでしょうか? たしかに、ニーズは膨大にあります。しかし、そのニーズに応えている人がすでにたくさんいます。お腹がすいたら、すぐそこにレストランがあります。ファーストフードがあります。コンビニでおにぎりやパンを買うのでも、そのニーズは満たせます。つまり、「何か食べたい」というニーズに応えようと、すでに多くの企業や提供者が待機しているわけです。
ニーズは存在しますが、ニーズはあっても、それをすぐに満たせる手段を相手が持っているわけですね。そうしたら、お客さんはあなたのところには来ません。一生懸命ニーズを満たそうと頑張っても、あなたはスルーされてしまうのです。
同じように「ウォンツ」を満たすことを考えることもあまり有効な策ではありません。「ウォンツ」は「ニーズ」よりも少し贅沢な欲求で「(必要不可欠じゃないけど)こんなことができたらいいなぁ」という具合の感情です。
食べ物を食べるというニーズに関連させて表現すると、「(せっかくだったら)おいしいものを食べたい」というのがウォンツですね。おいしいものでなかったとしても、食べられればニーズは満たされます。そしてそれで事足ります。ウォンツを満たさなくても死ぬことはありません。ウォンツは「満たされなくても、特に問題ない欲求」なんですね。
モノ余りの時代には、最低限のニーズは満たされきっているので、その上にある少し贅沢なウォンツを満たさなければお客さんに相手にされない。それが「ウォンツを満たせ」の考え方です。でも、それはあまりにも不安定で、提供者からしたら危ない欲求です。
かつて、こんなことがありました。知人がイタリアンレストランを開業したのです。彼は自宅の近くで開業したのですが、その理由は「このあたりにイタリアンレストランがないから」でした。つまり、このエリアの人が、「家の近くでイタリアンを食べたい」と思った時に来てくれるだろうと考えたわけですが、それは非常に限定的な「ウォンツ」です。
食事をしたいと思うのはニーズですが、「せっかくだったらイタリアンにしたい」というのはウォンツです。さらに、「できれば家の近くで」というのもウォンツです。
「同業種が近くにないから、自分のところに来てくれるだろう」と考えたわけですが、それは拙速だったと言わざるを得ません。お客さんは「近いからそのお店に食べに行く」わけではなく、「食べたいから行く」のです(近い方が足を運びやすくはなるかもしれませんが、「近い」だけで行くことはありませんね)。
つまり、このあたりにイタリアンレストランがないからお客さんが来てくれるだろう、と考えるのは、「食事をしたいと思っている人」かつ、「せっかくだったらイタリアンを食べたいと思っている人」かつ、「できれば家の近くで、と考えている人」なのです。
これらの条件をすべて持っている人でなければ、来てもらえないわけです。そう考えると、このレストランにお客さんが集まらないのは、自然なことなのです。
では、ワナに陥らず、売れるコンテンツに仕上げるためには、どうすればいいのでしょうか? 書籍『どうすれば、売れるのか?』では、その具体的な作り方について、4つの法則から詳しく解説しています。ぼくが20年かけて作り上げた、商品開発からコンテンツ制作、マーケティング、PR、集客まで、あらゆるビジネスで役に立つ、人の心を動かす究極のメソッドです。ご興味のある方はぜひお買い求めください。
(本原稿は、『どうすれば、売れるのか?――世界一かんたんな「売れるコンセプト」の見つけ方』から抜粋・編集したものです)