売れないコンテンツの3つの特徴

 商品が売れないのは、その商品が持っているコンテンツに魅力がないからです。しかし、提供者(企業側)が商品を設計する時、魅力がない商品と思いながら設計しているわけではありません。みんな、この商品だったら世の中に受け入られる、求められると思っています。ですが実際には、多くの商品は魅力的になりません。なぜでしょうか?

 それは、コンテンツの捉え方に問題があるからです。ここから、「多くのプロが陥るワナ」として、なぜプロが考えて企画した商品が消費者に魅力的に映らないかを考えていきます。

【プロが陥るワナ1】
スペック・要素を押してしまう

 最も多いのは、商品のスペック・要素を押してしまうということです。「こんないい材料を使っています」「こんな成分が入っています」「ハイスペックです!」などなど、商品の用途を語る前に、原材料・素材や「性能の良さ」を語ってしまうのです。

 材料の質や性能の良さを語って意味があるのは、そもそもその商品が提供する機能・効能が魅力的であることが前提です。そもそも消費者が「ほしい!」と思う商品であることが前提で、その内容をより強く感じてもらうために素材や性能の良さをアピールするのであれば、素材をアピールすることは有効です。

 軽くて丈夫なカバンがほしい人にとっては、「世界一軽く、世界一丈夫な素材を使っています」というアピールが意味を持ちます。でも、軽くて丈夫なカバンをほしいと思っていない人には、その素材アピールは完全に無意味ですよね。

「タウリン1000mg配合」という商品があります。超有名な栄養ドリンクです。じつは、ぼくはこの商品を愛飲していて、今でもフジテレビの「とくダネ!」に出演する前には、必ずコンビニに寄って買っています。

 ぼくは大好きなので、正直なところどんなフレーズで広告されていても買います。ただ、この“タウリン1000mg押し”が一般の消費者にどれだけ響いているかは、検証する余地があるかなと思っています。

 これだけの認知度がある商品なので、もはやどうでもいい、という意見もあるでしょう。しかし、冷静に考えてみると、「タウリン1000mg」を摂取したくてこの商品を買っている人はいないはずです。それどころか、タウリン1000mgの効能を具体的に知っている人もほとんどいないでしょう。

 タウリンをほしい人には、「そのタウリンが1000mgも入っていますよ!」とアピールすることは有効です。しかし、そうでなければ、企業は良さを伝えているつもりでも伝わっていないことになります。

 このタウリン1000mgに関して、おもしろい現象が起きています。コンビニやドラッグストアで栄養ドリンク売り場に行ってみてください。数多くのドリンク剤が売られていますが、そこで「タウリン競争」が行われているのです。

 みなさんがよく知っている「タウリン1000mg配合」の横に、「タウリン1500mg配合!」「うちは2000mg入っています!」「うちは3000mgです!」という“ライバル商品”が並べられています。

 もともと、消費者はタウリンを求めて買っているわけではありません。なのに、その量で勝負しようとしているわけです。もしこの方向性で新商品を考えると、「こんどはさらにタウリンを増量して4000mgの商品を出すか!」という話になります。

 このライバルとの競争は、残念ながら消費者を置き去りにしていると言わざるを得ません。消費者を見て、消費者がほしがるものを増やそうとしているのではなく、ライバルを見てライバルよりも「前」に出ようとしているだけです。

 ライバルより前に出るのは大事ですが、それはお客さんが求めている要素であることが前提です。お客さんが何とも思わないようなことで一番になっても、意味がありません。

 プロであればあるほど、他社の存在が目に入り、他社の存在が気になるものです。それは痛いほどよくわかります。でも、もしそのライバルとの競争が消費者の方向を見ていないのであれば、評価されません。その証拠に、「翼をさずける」とうたった商品に、どれも負けてしまいました。

 多くの事業者が、一生懸命“要素”を打ち出しています。春先、電車の中に並ぶ英会話学校のポスターを見てもそれがわかります。各社とも、一生懸命お客さんに向けて「ウリ」を伝えようとしています。

「うちの学校はこんな特色があります!」
「うちにはこんなサービスもあります!」
「今なら入会金無料です!」

 ただ、それを見てもみなさん英会話学校に通いません。なぜでしょうか? それは、みなさんに刺さっていないからです。彼らは自分たちのサービスの特徴、つまり「自分たちが何を提供するか」を一生懸命に語っています。でも、それではお客さんに届きません。

「うちの教室は駅から徒歩3分以内です!」とアピールしても、それは英語とは関係ありません。通いやすさを気にするのは、「英会話学校に通いたいけど、遠いから行けない……」と思っている人だけのはずです。

「うちの講師は全員外国人!」とアピールする英会話学校もありますが、外国人だからといって、講師として優れているとは限りません(ぼくは、初級レベルの人は日本語がわかる講師の方が英語をマスターしやすいと思っています)。外国人講師の方が「なんとなくよさそう」と感じる人もいるとは思いますが、そのうたい文句で申し込む人は、「英会話習いたいけど、日本人から学ぶのはちょっとなぁ」と思っている人だけです。