「依存度が高すぎる人には特徴があります」
そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/種岡 健)
何かを好きになりすぎる人
誰もが「メンヘラになってしまう瞬間」があります。
たとえば、さびしさなどの感情で何かに頼りたくなるときです。
いわゆる「依存」には、お酒や薬といった依存しやすいものだけでなく、ご飯や人に対する依存もあります。
「選択肢を他人に丸投げして自分で解決策を出さない」
「不安な気持ちやイライラする気持ちを他人に頼らないと消せない」
なども当てはまります。
一般的に「依存症」のレベルとしては、特定の物質使用や行為が身体的、精神的になくてはならない状態になり、自分ではコントロールができなくなってしまう場合に病気と診断されます。
ここでいうメンヘラっぽさの「依存型」は、そういった依存症とは少し違い、主に精神的な拠りどころがないと不安になる、広い意味での「依存体質な状態」を指します。
一人で何かをすることが極端に苦手だったり、特定の相手と連絡が取れなくなると不安になったり、頼れる対象がいないとイライラしてしまう……。
そんな依存体質になりそうなことは、多くの人に当てはまるでしょう。
もちろん、これは人間関係だけに言えることではありません。
車や、仕事、スマートフォンにお金など、それが近くにないとイライラしたり、不安になってしまうことがあると思います。
人によって、この依存体質の度合いは違います。
軽い依存は誰にでもありますが、「これがないと死んでしまう!」というくらい思いつめているレベルになると厄介です。
依存対象との関係をつなぎ留めるために、怒り出したり泣き出したり、極端な言動をとったり、借金をして自分の生活を壊すまでエスカレートしてしまうリスクがあります。
何かに依存してしまう人の特徴とは?
また、「依存することそのものに依存する」という状態に陥ってしまうことも少なくありません。
何かに依存していることをやめることに恐怖を感じて、生活が破綻しているのに現状を正当化したり責任転嫁したりしてしまうのです。
そのせいで、依存という問題そのものが見えなくなります。
この瞬間の原因は、「視野の狭まり」です。
「これがなくなると生きていけない」
「それがないと人生に意味が持てない」
そんな極端に狭まった価値観や選択肢を失うことへの恐怖こそが、「依存型」のメンヘラっぽさの正体です。そのための処方箋は、次の2つです。
・自分で決断をすること
・前向きな考え方を自分で賞賛すること
これらをやってみることが重要です。
依存型になってしまう理由に、「過去に救済体験があること」が挙げられます。
たとえば、クラスでいじめを受けたときに、励ましてくれる恋人や友達がいるととてもホッとすると思います。
同じように、過酷すぎる仕事や家庭でのストレスから、息抜きになるようなお酒やタバコ、パチンコなどの体験は、安らぎを与えてくれると思います。
この体験をほどほどにし、それを糧に「明日もがんばろう!」と自分でコントロールできるならば問題ありません。
しかし、あまりにつらい状況に立たされて、他に逃げ場がないと思い込みすぎてしまうと、
「これだけがつらいことを忘れさせてくれる!」
と、考えが飛躍し、依存するきっかけが生まれてしまいます。
人間は、何かによってストレスや苦痛から解放された経験があると、それを過大評価してしまうのです。
そうして解決策が1つしかないと思い込み、他の解決策が見えなくなってしまいます。
「依存」を抜け出すコツ
先ほどの「自分で決断をすること」「前向きな考え方を自分で賞賛すること」を具体的に考えてみましょう。
そのためには、「1つのことに依存しない」あるいは「依存先を増やす」ということが大事です。
何かを決めるときに、誰かに頼らずに、自分だけで決めてみましょう。
レストランで何を食べるかを決めるときですら、他人の顔色をうかがってしまうことがないでしょうか。
そういうクセを治していくのです。
また、「これがなくなったら死ぬ!」という状態から、「他にもこれがあるから大丈夫」という状態に変えていくために、好きなものを3つくらい持つようにします。
そうやって、徐々に強い依存から抜け出していくことを目指しましょう。
(本稿は、『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』より一部を抜粋・編集したものです)
精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医。
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。