「『自信がない』が口癖になっていませんか?」
そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/種岡 健)
自信がなくなる人
「自分はこういう人間だ」というアイデンティティ(自己同一性)を失うと、自分の中にメンヘラっぽさが現れてしまいます。
アイデンティティというのは、
「人種でいうと、私は日本人だ」
「家族でいうと、私は母親だ」
「出身地でいうと、私は関西人だ」
というように、自分を表す認識のことです。
自分らしさを示すための「存在証明」ともいえるものです。
自分や他人にわかってもらいやすいアイデンティティであれば、ある程度、簡単に見つけることができます。ですが、
「自分って何だろう……」
と悩む人は多いです。
個性や独自性のような「私らしさ」という自己同一性の証明はとても難しく、特に人生経験が少ない若者には見つかりにくいものです。
「自分の趣味は何だろう?」
「私って、挑戦的な人間だろうか、慎重な人間だろうか……」
「自分のやりたいことって何だろう?」
というように、自己同一性は見えにくいですよね。
さらに、自己同一性が揺らいだとき、人の心は不安定になります。
仕事一筋だった人が、歳を取って仕事を辞めた途端に、お酒をたくさん飲むようになって悲観的なことばかり言うようになったりします。
自己同一性というものは、いわば人間の芯であり、人を支える主柱になります。
だからこそ、自己同一性がないと、メンヘラっぽく心が不安定になってしまうのです。
自己評価が低すぎないか?
そういう「自己同一型」への対処法は、
・変えられることと変えられないことがあると受容すること
・前向きな考え方を自分で賞賛すること
という2つをやってみることが重要です。
誰でも自己同一性について悩む時期が訪れます。
その時期のことを「モラトリアム」と表現します。
人が安心して生きるようになるためには、モラトリアムを抜けて自己同一性について「気づく」必要があるのです。
他者から見て、あなたが「めちゃくちゃ明るくて社交的な人間」であったとしても、それにあなた自身が「気づいている」という状態にならなければ、自己同一性にはなりません。
自己評価が低すぎたり、自信がないことで自己同一性を受け止められないこともあります。
ただ、人間の短所や欠点は、見方によって長所や個性にもなりえるのです。
我が強く、人の話を聞かない人は、見方を変えれば「自立心が強い」ということでもあります。
悲観的で優柔不断な人は、見方を変えると「慎重で計算高い」とも取れます。
自分自身の自己同一性をロジカルにとらえて、それを活かすことで「自信を生み出す」というポジティブなフィードバックをし続けることが大切なのです。
若い頃はとても不安定で、「自分はなんて無価値な人間なんだろう。こんな自分は生きていても無駄だから死にたい……」と思っていた女性が、なんとなく生活して、結婚して、子どもができたとたんに「この子のためには絶対に死ねない!」と一念発起してメンタルが安定することがあります。
これは親になることで、自分の中に「子ども」という強烈な芯ができるからです。
ただし、これほど強烈に自己同一性が根づいた場合、子どもが成長し、自立をしようとしたときに不安感に襲われてしまうことがあります。
子どもが自分にとって、自己同一性のすべてであった人には、その子どもを失う際にもまた大きな不安が襲ってくるのです。
だからこそ、「変えられることと変えられないことがあると受容すること」が必要になります。
面接のように前向きに
まずは、「私のアイデンティティは○○です」と、決めてみてください。
できるだけ前向きな言葉を選びます。
そのコツは、「面接」を思い出すといいでしょう。
面接の場では、どんなことでも「自分の魅力」として受け答えをすることが求められます。
「自己中心的な性格」ではなく「自分で決められる性格」。
「落ち着きがない」ではなく「敏感に気づける」。
というように、どんなことでもプラスに言い換えられるはずです。
とっさにそうやって判断することで、変えられないことを受け入れ、前向きな自分を称賛できるようになります。
(本稿は、『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』より一部を抜粋・編集したものです)
精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医。
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。