上場目前まで再建を進めてきた西武HDと、最大株主である米国ファンドのサーベラスとの対立が新聞などで大きく報道されています。サーベラスがTOBで株を買い増し、重要決議事項を拒否できる1/3以上の持ち株比率を確保して、西武HDに対する影響力を高めようという話です。

西武HD VS.サーベラスは
ダイエー騒動の再現?

 これを見て思い出されるのは、今から10年前、小泉政権で不良債権問題が山場を迎えていた頃のダイエー騒動です。

 当時、ダイエーの福岡3事業(ホテル、ドーム球場、ショッピングモール)について産業再生機構入りの動きがあり、この3事業と不可分のホークス球団の行方が大きな話題となりました。結局、ダイエーはこの3事業を外資系ファンドに売却することで産業再生機構入りを回避しました。ところがこのとき、ホークス球団については、事実上それを食い物にするような密約が、球団を直接保有できない外資系ファンドと、形式的に球団を継続保有するダイエー本体との間で結ばれていたことが、後に新聞でスクープされたのです。

 結局、ホークス球団の危機的状況は、翌年、皮肉にもダイエー本体が産業再生機構入りした直後、産業再生機構と政府関係者のイニシアティヴで球団を速やかにソフトバンクに売却することで回避できました。私自身、その過程を目撃しているのですが、こうしてホークス球団の福岡フランチャイズは守られたのでした。

 今回の西武HDの場合、外資系ファンドはTOBによる株の買い増しとともに、元金融庁長官の五味氏などを新たな取締役として受け入れるよう要求しています。ちなみに、先週段階で、金融機関筋や政府筋からは「外資系ファンドの代理人弁護士が、将来的には現社長を交代させることを視野に五味氏を取締役として送り込む趣旨のことを金融機関のトップに言って回っている」という噂も聞こえてきました。