しかしながら初期のDAO参加者は、DAOのコミュニティが人気になっていくに従って、より多くのアートや音楽、マーケティングなど世界トップ級の人材が後からDAOに参加してくるといった後付けの無形資産の価値を味わえるのが面白いところだろう。

8. Media DAOs

Media DAOは、通常はメディアが担当する記事執筆・公開などの作業を、DAOのコミュニティベースで行っている。

特徴は大きく2つある。ジャーナリストといった特定の主体者がいないほうが公開しやすい類の記事執筆に最適なこと、及び各記事が、メディアの垣根を越えて世界中のトークンホルダーにより、コミュニティドリブンで翻訳されて各ローカルへ広がっていくことが挙げられる。

コミュニティによる圧倒的なスピードで、各地域に情報が伝搬するその様子は、Bankless DAOというDAOなどで見ることができるが、そのスピード感もさることながら、各地域で協力した関係者にも報酬をトークンで分配できるようなシステムが備わっていることが特徴である。

DAOエコシステムの歴史

DAOのエコシステムを語るうえで、DAOの歴史についての記述が不可欠だ。イーリアムブロックチェーンにおけるDAOの先祖として、「The DAO」がある。The DAOはその名の通り、DAOをブロックチェーン分野に知らしめたことで有名だ。

亀井聡彦・鈴木雄大・赤澤直樹共著『Web3とDAO 誰もが主役になれる「新しい経済」』(発行:かんき出版)
亀井聡彦・鈴木雄大・赤澤直樹共著『Web3とDAO 誰もが主役になれる「新しい経済」』(発行:かんき出版)

The DAOは、ベンチャーキャピタルのような役割をDAOの運営で行うことを目的に作られた、イーサリアム上の最初の大きなDAOである。

この立ち上げ後、2016年にThe DAOは当時の時価で160億円に上る金額のイーサリアムを個人投資家から集めることに成功した。

しかしこの後スマートコントラクトにバグがあることがわかり、その3分の1程度の資金が流出するという悲劇を招く。

この際に、初めて「ハードフォーク」と呼ばれるイーサリアムネットワークの分岐が行われた。

ここで新しく生まれた(ブロックチェーンを資金流出前まで巻き戻すことを選択し、その巻き戻した世界のみを唯一存在する正しい世界と扱った)ほうのブロックチェーンが今のイーサリアムになり、巻き戻すことを一切拒否したブロックチェーンが今のイーサリアムクラシックになるというコミュニティの一部分裂を引き起こした。

このような悲劇の後、2019年からようやく初期のThe DAOコンセプトを彷彿とさせるようにInvestment DAOの属種である、MetaCartel Ventures DAOやThe LAOが立ち上がり、DAOによるDAOへの投資が始まった。