「メタバースって本当にそこにいる感じがするんです。(仕草などから)相手の外見が見えなくても本当に会っている気になりますし、VRの遊園地に行ってはしゃいでいると本当にデートをしているような感覚になる。今はゲームやライブなど、いろいろなかたちでメタバースが使われ始めていますが、メタバース×恋愛もありだなと思ったんです」(佐藤氏)
アイデアを検証するべく、佐藤氏は試しにVRChatを活用した「VRCお見合い会」というイベントを開催してみることにした。イベントの内容はバーチャル版の“街コン”のようなもの。10人弱と8分ずつ会話し、マッチングが成立した場合には個別に連絡を取れる仕組みだ。
募集を始めると初回で100人以上から応募があり「顔が見えない恋愛に興味がある人がこんなにもいるんだ」と可能性を感じた。VRCお見合い会にはトータルで1000人ほどから応募があり、累計では約300人が参加をした。
参加者は既存のマッチングアプリを使っていない人がほとんどで、「そもそも使ったことがない人」と「挫折をした人」がだいたい半分ずつ。ヒアリングをしてみると「既存のマッチングアプリが苦手」という声も多く、課題が存在することがわかったという。
「既存のマッチングアプリはハイクラスの人同士が輝きやすい構造になっていると思っています。外見が良い人やスペックが高い人に人気が集まり、そうではない人はなかなか出会えず、疲弊してしまう。みんなが自分に自信があって、積極的に『いいね』やメッセージができるわけではないと思うんです」(佐藤氏)
イベントの回数を重ねていくと、お見合い会でマッチングした参加者同士が付き合うような事例が少しずつでてきた。バーチャル空間での恋愛には一定のニーズがあり、可能性も秘めている──。手応えを掴んだ佐藤氏たちは、自社アプリの開発をスタートし、2022年9月にMemoriaのアルファ版の提供を始めた。
婚約事例も誕生、1億円調達で恋愛特化型メタバースの拡大へ
2022年5月にVRCお見合い会をスタートしてから1年弱。お見合い会とMemoriaを合わせると、2月までに1600人以上から応募があり、438人が顔合わせに参加した。実際にマッチングが成立したのは139組(278人)。つまり顔合わせを実施したユーザーの約6割は、相手に興味を持って「もっと話したい」と思ったことになる。
その中から佐藤氏たちが把握しているだけでも20組程度のカップルが誕生しており、2組が婚約まで至っているという。