昨年末時点での個人普及率が79.1%と、身近な存在となったインターネット。中でも「2ちゃんねる」に代表される匿名掲示板は、本名を知られることなく気軽に自分の意見を表明できる場として、根強い人気がある。しかし一方でその「気軽さ」故に、容易に名誉毀損を生みやすいという面もある。もし被害者が名誉回復を求める行動に出たら、投稿者はどのようにして割り出されていくのか。その経緯を解説する。(弁護士:最所義一 協力:弁護士ドットコム

決して完全に「匿名」ではない匿名掲示板
ある日舞い込んだ一通の書面には……

「ある日突然、『発信者情報開示に係る意見照会書』と書かれた書面が、私が契約しているインターネットプロバイダから届きました。書面には『貴方が発信されました、次葉記載の情報…』と記載され、請求者に弁護士の名前が書かれています。

 確かに、私はある掲示板に投稿しました。ですが、書き込んだのは匿名掲示板のはずです。なぜ、私が書き込んだことが分かったのでしょうか。その書面には、『損害賠償請求権の行使のために必要』とも書かれていますが、私は訴えられるのでしょうか……」

 ごく平凡なサラリーマン、N氏からの相談だ。今日、インターネットは誰でも自由に自分の意見を発表できる身近な存在になっている。インターネットのおかげで、誰でも気軽に自分の意見を発表できるようになった。しかし、その一方で、「気軽な」意見発表が「気軽な」名誉毀損を生み出しているという現状がある。

 掲示板やブログでの「気軽な」表現が、後々、取り返しのつかない重大な結果を生じさせてしまう。その経緯について説明しよう。

投稿者を特定する最初のステップ
「発信者情報開示請求」とは

 なぜ、N氏が書き込みを行ったことが判明してしまったのだろうか。掲示板で書き込みを行った場合、その書き込みが、いつ、どこのプロバイダを経由してなされたかについての情報(アクセスログ)は、掲示板の運営者が把握している。名誉毀損表現がなされた場合、委任を受けた弁護士は掲示板の運営者に対して、送信防止措置(「削除」)を依頼するとともに、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、発信者情報の開示を求めることになる。