親や兄弟であっても、なかなか相談できない悩み事はだれにでも一つや二つはあるだろう。そんな誰もが持つ心の隙間に入り込み、カネをむしり取っていくのが、悪質な霊感商法だ。物事の判断ができる普通の人ほど、一度嵌るとなかなか抜け出せないことが多いという。騙されたと気付いて裁判を起こしても、霊能師と呼ばれる人間の素性を調べるにも一苦労ということもあるようだ。実際に霊感商法に嵌りかけた40代男性の事例を基に、注意すべきポイントを考える。(弁護士:秋山直人 協力:弁護士ドットコム

先祖の死も胸の痛みも
「お稲荷様のたたり」!?

「あなたの胸の苦しみは、先祖がお稲荷様を粗末に扱ったのが原因です」

 安藤さん(仮名・40代男性)は、知人に「良い霊能師がいる」と紹介されて「霊能鑑定」を受け、そのように言われ、ショックを受けた。

 さらに、霊能師は、ショック状態の安藤さんに、こう続けた。

「お稲荷様のたたりで先祖が次々と早死にした」
 「先祖が良い死に方をしていないため、先日亡くなったあなたの親御さんは先祖に引きずり込まれた」
 「あなたにも先祖による引っ張りがあり、そのために胸の苦しみなどの症状が出ている」

 安藤さんは、長年、胸の苦しみに悩まされており、医者に診てもらってもなかなか原因が特定できないことから、もしかしたら霊的な問題が原因ではないかと思うようになっていた。知人からの紹介は、まさに渡りに船だったわけだ。