ザッカーバーグ氏が考えるメタバース戦略

Facebook CEOのマーク・ザッカーバーグ氏は2021年7月に米THE VERGEが行ったロングインタビューの中で、メタバースをどう捉えているかについて、さまざまな発言を行っている。

メタバースでVRは重要な位置付けになるだろうとしているものの、そのインタビューの中では「VRやARに限らず、PCやモバイル、ゲーム機といった多様な異なるデバイスへと広がっていくもの」と述べている。VRのみに限定しているものではない、というのがポイントだ。

「次の5年の間に、当社は次の段階として、ソーシャルメディア企業から、メタバースの企業として見られるように効果的に移行していくことになると思います」(ザッカーバーグ氏)

メタバースのビジョンを作り上げるために必要なキーワードとして、ザッカーバーグ氏は「没入感(センス・オブ・プレゼンス)」を挙げている。

没入感とは一般に、VR空間内などで見るコンピュータ映像を通じて、現実の世界と見間違うような感覚を生み出し、現実の世界では離れた人とでも、空間を共有しているような感覚が得られることをいう。現実世界とコンピュータ映像との間で体験に差がないと感じられれば、没入感が上がっていると言える。

ザッカーバーグ氏は没入感を強化することで、現在主流となっているZoomのようなビデオ会議システムよりも同じ空間を共有している感覚を高め、より快適に共同作業ができると考えているのだ。Horizon Workroomsのことを具体的に話しているものではないが、彼が今回のサービス公開を念頭に置きつつ話していたのは間違いないだろう。そして、それが日常使いされることも最初から目標になっている。
 
FacebookがOculusの買収を決断したのは2014年だが、当時のOculusはVRデバイスをゲーム機として売り込むことを主眼に展開していた。しかし、ザッカーバーグ氏はゲーム機としてのVRそのものには大きな魅力を感じてはいなかった。

買収を決断した背景には、「次の10年でVRが、ニュース、スポーツ、映画、テレビ、そして、ビジネスミーティングの場といったあらゆるもので使われるようになる」という彼自身の予想からだった。そして、17年にザッカーバーグ氏は「10億人のユーザーをVRに参加させる」というかなり大きな目標を設定し、発表した。その実現のためには、多くの人の普段の生活のなかに、VRが一般的に使われるような環境が生み出されなければならない。