今年はリモートワークを取り入れた企業が増え、通勤時間の削減や服装の自由さなどに恩恵を感じた人も多かっただろう。ただ、同時に「紙の書類の処理・決裁ができない」「同僚との何気ないコミュニケーションが取りづらい」といった課題を感じた人も多く、これらの課題解決を目指すソリューションにも注目が集まった。
前者の紙の書類の処理をはじめとする業務の電子化や効率化に関しては、官民挙げての「ハンコ廃止」の動きなどもあって、電子署名や電子契約関連サービスの導入が進んでいる。また以前から提供されてきた、業務そのもののデジタル化を支援するサービスも大きく成長した。今後も、さらにこうした動きは加速するだろう。
一方で、後者の「何気ないコミュニケーションの取りづらさ」に関しては、これぞという解が見つけにくく、各社が苦労しているところだ。「Zoom」や「Teams」「Slack」といったコミュニケーションツールの普及が進んで、ミーティングやテキストベースで相談するための手段は確保できたものの、リアルなオフィスで行われていた“雑談”を再現するには、もうひと工夫が必要だ。
この解決策として、ゲーム用ボイスチャットとして使われてきた「Discord」のほか、日本のスタートアップが開発するリモートワーク用ボイスチャット「roundz(ラウンズ)」のようなツールを併用する例が出ている。またSlack自体も、音声チャットの実装を検討しているという。どうやら、リモートワークで会話の気軽さや偶発性、常時つながっている感覚などを再現するカギのひとつとして、“音声”が注目されているのは間違いなさそうだ。
2020年8月にサービスを開始した「oVice(オヴィス)」も、音声を軸にしたリモートコミュニケーションのためのツールだ。その最も大きな特徴は、リアルと同じような「空間」の概念や「距離感」を、ウェブブラウザ上にレイアウトされたバーチャルオフィスで再現している点である。