NIHARIKA KULKARNI/REUTERS ムンバイにあるボンベイ証券取引所(BSE)の前には、ニューヨーク名物の雄牛の銅像「チャージング・ブル」の複製がある

 ここ2、3年は世界各地の株式市場が波乱に見舞われたが、中でも大揺れだったのがインドだ。2021年のテック企業ブーム、22年の暴落、そして今年は国内屈指の複合企業アダニ・グループへの空売り攻撃があった。

 だが2023年の年末を迎え、インド株は絶好調の兆しを見せている。ナショナル証券取引所(NSE)上場の50社で構成するニフティ50指数は3月末からの上昇率が20%を超え、米S&P500指数など世界の主要株価指数の大半を上回っている。

 さらに、流動性とテックブームに支えられて投資熱が盛り上がった20、21年とは異なり、今回の上昇にはより強固な裏付けがある。成長は力強く、利益率は上昇し、バリュエーションも盤石に見える。例えば上場投資信託(ETF)「iシェアーズ・インドMSCI ETF」の12カ月先予想株価収益率(PER)は21倍で、S&P500指数の19倍をわずかに上回っている。同ETFのコロナ禍前の平均も約19倍だった(ファクトセット調べ)。

 群を抜いて高い経済成長率、インフレ率の低下、比較的見通しやすい政治環境、急速に伸びるテック業界など、インドには多くのセールスポイントがある。また人口は世界最大かつ比較的若く、中国を離れて多角化したい多国籍企業の製造関連投資を急ピッチで吸収しつつある。

 7-9月期国内総生産(GDP)は、製造業と政府支出に支えられて前年同期比7.6%増となり、主要国で最も高い成長率を記録した。低価格のロシア産原油がインド準備銀行(中央銀行)のインフレ抑制への取り組みを後押ししている。証券会社CLSAによると、ロシア産はインドの原油輸入全体の約45%を占める。

 外国からの資金流入の余地もまだありそうだ。インド株の非居住者保有比率は17.5%と、ピークだった2021年2月の20.6%を大幅に下回っている(CLSA調べ)。コタック・マヒンドラ・アセット・マネジメント・カンパニーによると、外国人による株式投資は昨年170億ドルの売り越しだったのに対し、今年は120億ドルの買い越し。国内勢は今年、約60億ドルの買い越しとなっている。

 一方、注意すべき点も多い。

 インドは石油のほぼ全てを輸入に頼っている。原油価格が反発すれば、インド中銀はよりタカ派的な政策姿勢に戻らざるを得なくなり、米連邦準備制度理事会(FRB)が来年利下げしても追随できないかもしれない。また、外貨準備高が大きいとはいえ、経常赤字が続いている。4-6月期は輸入が輸出を上回ったため、経常赤字が92億ドル、対GDP比1.1%に拡大した。1-3月期は13億ドル、同0.2%だった。インフレ率は10月に前年同月比4.87%と5カ月ぶりの低水準を記録したが、中銀目標の4%を依然上回っている。

 コンサルティング会社ガベカルによると、インドの公的債務は対GDPで80%を超え、すでに新興国の中で最も高い部類となっている。政府債務の増加は、2桁後半という公共投資の伸びを維持するのが困難になることを意味する。インドが中国に代わる製造拠点として本当に信頼できる存在になるためのインフラ整備を望むのであれば、これは大きな問題だ。

 ニフティ50やSENSEX、MSCIインド指数に投資している人は、インドの銀行に対するエクスポージャーを大幅に高めていることも認識したほうがいいだろう。ファクトセットによれば、MSCIインドの30%近くを金融銘柄が占めている。テック銘柄の割合は13%、消費関連銘柄は20%だ。

 また、インド株はバリュエーションに基づくと投資妙味があるように見えるが、それでもほとんどの新興国市場より割高だ。ニフティ50の予想PERは、新興国の銘柄で構成するMSCIエマージング・マーケット指数よりも64%高い。このプレミアムの過去10年間の平均は47.6%だった(コタック・マヒンドラAMC調べ)。

 コタック・マヒンドラAMCの株式部門で最高投資責任者(CIO)を務めるハルシャ・ウパジャヤ氏は、インドのバリュエーションが相対的に高いことから、短・中期的な視野を持つ投資家の中には中国に戻りたくなる人もいるかもしれない、と考えている。

 それでもインフレ率の低下、企業収益の増加、多国籍企業からの関心の高まりを受け、インドに投資すべき理由は近年になく充実しているようだ。

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