ホテルオークラはJALホテルズ買収で収益構造を転換。旗艦のホテルオークラ東京の業績低迷を補い、その改築に向け財務を改善している。非上場企業だが、公開資料からその戦略を読み解く。

 ホテルオークラは東京都港区のホテルオークラ東京を旗艦ホテルとして、同ブランドなどで国内に16カ所、海外に9カ所のホテルを運営している。2010年9月に、経営再建中の日本航空からJALホテルズを買収し、その運営委託事業も加わった。買収関連で要した金額は、株式取得で45億円、償却や事務経費などを含めると50億~60億円とみられる。

 買収の背景には、JALホテルズに中国資本が接近しており、“日の丸ホテル”を守りたいという両社の思惑が一致した面がある。また、ホテルオークラには、JALホテルズが持つブランドと国内外のチェーン展開力は魅力的だった。JALホテルズは現在、国内に34カ所、海外に17カ所ある。

 新たに入手したこの事業は、ホテルオークラの今後の成長戦略に必要不可欠なものとなっている。というのも、ここ数年、旗艦のホテルオークラ東京の競争力低下が顕著になってきているためだ。

 同ホテルは12年に開業50周年を迎えた老舗で、政官財の年配層には一定の信用がある。世界銀行や国際通貨基金(IMF)の総会が東京で開かれた際にはオフィシャルホテルとして、宿泊のみならず、レセプションや分科会などの会場にも使われた。

 だが、ここ5年間のホテルオークラ東京の売上高は低迷している(図(2))。外資系ホテルなどが続々進出し、競争が激化する中、長引く景気低迷により販売単価下落を余儀なくされてきたからだ。

 しかも、ホテルオークラ東京は、宿泊、料飲、宴会がそれぞれ3分の1ずつの売り上げ構成で、レストランは直営のため、人件費比率が高い構造にある。売上高の低迷は利益の悪化に直結し、経常減益または損失となった。