その3つとは、
(1)生活防衛
(2)資産形成
(3)脱炭素
の3項目です。順にお話ししたいと思います。
(1)生活防衛は「抜本的」に
私は年末は自分へのご褒美を込めて海外で過ごすことにしています。この原稿は滞在先のホテルで書いているのですが、この年末の滞在はそれほど優雅ではありません。物価が高いのです。
10月に香港、この年末は米国で過ごしてみた感想は、どちらの国や地域も物価は日本の倍という感覚です。とはいえ旅の間は価格よりも体験重視ですから、極力気にせず現地滞在を楽しんでいます。それはそれで経済評論家の矜持なのでよいのですが、仮にこれが日常になったら生活が成り立たないなというのも実感です。もはや日本人にとって「日本の稼ぎで海外移住」は難しいのかもしれません。
一歩思考を進めて、仮に日本の物価がそこまで進んでしまったらどうなるでしょうか。
直近の消費者物価指数は前年比で2.8%の上昇と、相変わらず穏やかなインフレが進行しています。ちょうど1年前の11月が前年比で3.8%のインフレでしたから2年間で6.7%の物価高になった計算です。さらに生活必需品の値上がりが総合指数より大きかった様子で、それで家計では指数以上に物価高を実感していたというのがこれまでの経緯です。
国内要因としては2024年には「賃上げ」が加わります。
そもそも企業物価指数はこれまでも消費者物価指数よりも大きかったのですが、そこを企業努力で値上げを我慢してきた企業が多かったのです。そこに賃上げが加わるので、2024年はこれまで我慢できていた企業の価格据え置き努力にはもう期待できません。
さらに、海外要因が加わります。具体的には商品相場の上昇と円安が物価高のリスク要因です。これについては過去2年と比較して「元に戻る」可能性もあるのですが、頭に入れておかなければならないのは冒頭のキーワードである「混乱」です。
ひとつだけ大きなリスク要因を名指しておきますと、世界がイスラエル情勢に注目しているのはオイルショックにつながる危険性が常に存在するからです。そして、もしイランなどが戦争に参加することでオイルショックが起きてしまえば、日本の物価がこれまでの倍に感じられるほどのインフレが起きることを覚悟する必要があります。
少なくとも過去、二度のオイルショックを経験してきた私のような世代から見れば、デフレしか経験してこなかった20代・30代とは世の中の振れ幅のリスクが違って見えています。
物価が倍になるというところまではいかないとしても、物価が今の1.2~1.3倍になったときに生活が成立するかどうかについては2024年の初めに少し真面目に考えてみたほうがいいかもしれません。
シミュレーションの仕方としては物価高の逆数で考えて、「手取りが今よりも2割減ったら生活が成立するだろうか?」などと実際に計算してみることをお勧めします。当然ですが、そうなったら「何かをやめないと生活が防衛できない」という事実に気づくことになると思います。
家計のぜい肉というものは常に存在するものです。これはファイナンシャルプランナーに相談すればより明確になることだと思います。生活が苦しくなってから慌てるのではなく、今のうちに生活防衛の計画をきちんと立てておく。それを一年の初めに行ってみるのは、2024年に関しては重要かもしれません。