われわれは、AI(人工知能)がバイオテロ用の毒物を生み出す可能性を懸念しないほうがいい。生物学・化学分野の理解を深めるAIの能力を制限することによる危険の方が、ずっと大きいからだ。悪が注目を集めるのは容易だ。テロリストが目的を達成するには1回の成功だけで十分だが、テロを防ぐ側にはすべてのテロの阻止が求められる。数え切れないほどのテロ計画が阻止されてきたが、世界の人々が知るのは実行されたテロ行為だけだ。生命科学と保健医療の分野にも、似たような不均衡が存在する。治すことよりも、害を生じさせることの方がずっと容易だからだ。大半の化学物質は、比較的少量で毒性を示すため、多くの医薬品の候補が第1相の治験で、毒性を理由に不合格とされる。しかしこうした毒性を持つ物質でも、その一部は改良によって、現在治療法のない多くの病気の治療に利用できることがある。化学療法の目標は、患者の命を(辛うじて)維持しながら、がん細胞を死滅させることだ。
【寄稿】AIは新薬開発に貢献
バイオテロへの懸念は不要
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