職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
そんな悩みをズバッと解決する書籍『気づかいの壁』の著者・川原礼子さんは、「気がつくだけの人」で終わらず、「気がきく人」に変われる、とっておきのコツをご紹介するプロです。この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきたノウハウを、さらにわかりやすくお伝えします。本稿では、本書には入りきらなかった「言葉づかい」について紹介しましょう。

感じのいい人がダメ出しするときに「気をつけている言葉づかい」ベスト1Photo: Adobe Stock

感じのいい人の共通点とは?

 あなたは、日頃、部下や同僚にダメ出しをしないといけないことがありますか?

 どのように伝えればよいのか、そのポイントとして、私の気づきをお伝えしましょう。

 私は、今でこそ企業研修講師として活動していますが、会社員生活がスタートしたのは30歳を過ぎてからのことでした(それまでは、14年近くアメリカで暮らし、日本食レストランを経営していました)。
 それだけに、当時は、日本での働き方はおろか、日本語も高校生レベルでしたので、「知らない言葉が出てくると、ノートの余白に書きとめて、あとで調べる」という毎日を送っていました。

 次第に、メモは進化し、「この人の伝え方はすんなりと頭に入ってくるな。感じがいいな」と思った表現も書き留めるようになっていきました。

 そこで気づいたことが、感じのいい人たちは、「否定語」が少ないということでした。

よくないダメ出し例

 たとえば、仕事の中で、次のような表現を耳にすることがないでしょうか。

「この数字が取れないと、目標が達成できないよ」
「詳細を教えてもらえないから、何も答えられないよ」
「会議でもっと発言しないと、何も考えていないと思われるよ」

 このようなダメ出しは、たしかにそうなのでしょうけれど、「ない」を二つも言われると、こちらの非を突き付けられているような気持ちになります。

感じのいい人が気をつけていること

 ところが、感じのいい人は、同じような状況でも、こんな表現をしています。

「この数字が取れれば、目標達成だね」
「詳細を教えてもらえれば、私も詳しくお答えしますよ」
「会議でもっと発言すれば、あなたの考えもさらに伝わるよ」

「~ないと、~ない」は、「~れば、~できる」と肯定形に変換していますね。

肯定されると「人は動く」

 先日も、あるお問い合わせ窓口を利用した友人が、「申込みはオンラインでないと、受けつけられません。」と案内されたそうです。
「電話でもできないか、ちょっと聞いただけなのに、跳ねのけられたような感じがした」と、ぼやいてました。

 この場合も、

「お申込みは、オンライン上でお受けしております。
 検索ボックスに〇〇と入れていただけましたら、すぐに入力フォームが出てまいります。」

 というように、肯定形に、こんなプラスアルファまで伝えられたら、ガラッと印象が変わります。

 相手の心も、「じゃ、やってみよう」と動いていくのではないでしょうか。

 なかなか動いてくれない部下や後輩に悩んでいる方も、なにげに使っている否定形を肯定形に見直してみてくださいね

(本稿は、『気づかいの壁』の著者・川原礼子氏が特別に書き下ろしたものです。)

川原礼子(かわはら・れいこ)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役。
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー。
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。