「マネジャーとして優秀かどうかは、部下のダメ出しの仕方でわかります」
そう述べるのはコンサル22年の知見を凝縮した書籍『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者である安達裕哉氏だ。
マネージャーとしての力量は「成果のなかなか出せない、側から見ても決して優秀とは言えない人」をどう扱うかで測られると言っても過言ではない。「部下に低評価を伝えるのが嫌だった」と言う安達氏は、コンサル時代に優秀なマネージャーから教わった「部下にダメ出しをする際に付け加えているひと言」が目から鱗だったと言う。(構成/淡路勇介)

頭のいい人が話す前に考えていることPhoto: Adobe Stock

部下に「低評価」を伝えるのがとにかく嫌だった

マネージャーになると部下に「ダメ出し」をしなければならない。
ダメ出しの最たるものが、「部下に低評価であることを伝える」ことだろう。
私自身、コンサルティング会社に在籍し、大阪と東京の支社長を歴任したので、「部下に評価を伝える」シーンは数多あった。

これがなかなか、大変な仕事だった。

高評価な部下に高評価を伝えるのは簡単だ。そのまま、高評価である理由を伝えればいい。

大変なのは、低評価である場合だ。

そもそも気が重いし、適当に甘い言葉を述べても、チームのためにはならない。放置すれば、それはマネージャーとしては怠慢だ。

論理的に伝えればいいのか?

私が在籍していたコンサルティング会社では、評価に誤差を生じにくいように、「客観的な数値」をもとにした評価をしていた。

なので、論理的に「低評価である理由」を伝えることができた。

しかし、いくら論理的に説明しても、低評価な人は「言い訳」をすることが多かった。

・いい仕事が回されない
・クライアントがアンケートを返してくれない
・ペーパーテストで評価がきまるのはおかしい
・勉強会の日程調整が難しかった

要は、低評価は自分のせいではなく、お客さんや会社のせいなので、「理不尽である」という訴えだ。

そんなこと言っているから、低評価なんだよ!と言うわけにもいかない。

マネージャーになったばかりの頃、私は悩んでいた。

部下に低評価を伝えるのが難しい。嫌いな仕事だ。

でも、優秀な部下だけのチームなんて存在しないこともわかっていた。

その部下が、元々は、仕事に対する情熱があったことも。

尊敬する上司に、そうこぼしてしまったところ、その上司は彼が低評価を伝える時に取っている「たったひとつの方法」を教えてくれた。

それは、評価を伝える際に、たった一言付け加えるだけだったが、人間の本質を見抜いた一言で、目から鱗だった。

その言葉を付け加えるのは、社長として自分の会社を経営するようになった今でも実践している。