「Bコープ認証」はスタートアップや中小企業こそ早く取得すべきだ
石井直樹(いしい・なおき)
1965年神奈川県生まれ。2004年石井造園の社長に就任し、現在に至る。同社は地域貢献や環境保全経営を推進し、2008年横浜型地域貢献企業認定(行政による初のCSR認定)、2021年度には青少年の体験活動推進企業表彰で最優秀の文部科学大臣賞受賞。2016年Bコープ認証を取得し、17年と18年Best for the World受賞。

経済的価値と社会的価値の創造を追求する企業「B Corp(Bコープ)」が今、世界で急増している。米国の非営利団体B Lab(Bラボ)が、公益性の高い企業にBコープ認証を付与する制度だ。世界では食品のダノンやアウトドア用品のパタゴニアなどが認証されている。近年、日本での認証ニーズが高まり、日本拠点Bラボ・ジャパンが近々開設される見通しにある。日本のBコープ企業36社(2024年1月22日時点)の中で、2番目に早く認証された石井造園の石井直樹社長に、Bコープ認証の意義やメリットを聞いた。(聞き手・文・撮影/ダイヤモンド社 論説委員 大坪亮)

日本で2番目に早く
認証取得できた理由

――貴社の「B Corp(Bコープ)」認証取得は2016年5月、日本企業で2番目です(下の図表参照)。なぜ、こんなにも早くに取得できたのですか。
 
 Bコープという認証制度の存在は2005年に、当時、明治大学公共政策大学院で教壇に立たれていた雨宮寛先生に教えてもらいました。先生から「石井造園の経営であれば、申請すれば短期間で取得できると思う。チャレンジしてみてはどうか」と後押しいただいたのです。

 実際、米国の認証機関BLab(Bラボ)のウェブサイト(https://www.bcorporation.net/en-us/)にあるチェック項目「Bインパクトアセスメント(BIA)」で自己採点し、合格できそうだと判断した2016年1月にBラボに申請して、メールでの質疑応答や資料提出、ビデオ会議を2回行い、5月に取得できました。期間は4カ月程度です。

――スピード取得ですね。Bラボのウェブサイトは英語表記、メールも英文、ビデオ会議も英語。また、BIAのチェック項目も200以上あって、これも英語です。

 雨宮先生に、マンツーマンでご指導いただいたおかげです。当社にも一人、英語ができる従業員がいるのと、Google翻訳にも助けられましたが、雨宮先生には相当なご支援をいただきました。BIAチェック項目についての当社の実態との照らし合わせや、Bラボとの英語によるビデオ会議など、先生のサポートがなければ、これほどスムーズにはいかなかったでしょう。

 ただし、Bコープ認証取得のために、自社の経営や運営、制度について、改善することはあまり多くはありませんでした。

――それは、貴社が以前からCSR(企業の社会的責任)経営を実践してきたからですね。その詳細は後ほど伺いたいと思います。

 雨宮先生のご支援や、CSR経営の継続に加えて、当時はBコープ認証制度が始まってまだ10年という段階で、早期に申請したこともスピード認証の理由だったかと思います。日本国内のBコープ仲間と情報交換をしていますが、その後だんだんと審査時間が長くなっているようです。申請件数が急増しているので、Bラボのスタッフは多忙なのではないでしょうか。

 さらには、当社が規模の小さな中小企業だということも、短期取得の大きな要因だと思います。従業員は現在13人、当時は11人です。毎日顔を合わせて、仕事をしています。日本の中小企業はどこも同じだと思いますが、従業員の喜怒哀楽、顧客との関係、地域との交流などを毎日把握して、トラブルなどがあれば即座に対応します。そうでないと中小企業は生き残っていけないからですが、こうした経営がBコープ認証取得では重要事項になっているのです。