「あなたは人生というゲームのルールを知っていますか?」――そう語るのは、人気著者の山口周さん。20年以上コンサルティング業界に身を置き、そこで企業に対して使ってきた経営戦略を、意識的に自身の人生にも応用してきました。その内容をまとめたのが、『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』「仕事ばかりでプライベートが悲惨な状態…」「40代で中年の危機にぶつかった…」「自分には欠点だらけで自分に自信が持てない…」こうした人生のさまざまな問題に「経営学」で合理的に答えを出す、まったく新しい生き方の本です。
この記事では、本書の内容に関するインタビューを掲載します。(構成:小川晶子)

「お金か、成功か」の二項対立にとらわれるな

――「成功」というと、一般的には経済的・社会的成功のことを指していますが、『人生の経営戦略』では、「自分らしく生きる」こととの両立を目指しています。

山口周氏(以下、山口):「経済的・社会的成功を手に入れろ」という考え方と、「自分らしく生きて本当の豊かさを手に入れろ」という考え方の二項対立が起きていて、僕はどっちにも違和感があったんですよね。

「どっちにも違和感があるとき」というのはだいたいイノベーションのチャンスです。

両方をとる第三の生き方「自分らしいと思える人生を歩み、経済的・社会的にも安定した人生を送る」ことを、「アリストテレス的人生論」として提案しています。

二つの矛盾を解決し、第三の解決策を示す。これこそが、「経営」なんです。個人の人生の「経営」にも、この考え方は応用できます。

第三の道

――「競争に勝たなければいけない」など、これまで慣れ親しんだ考え方から抜け出るにはどうしたらいいでしょうか。

山口:「~すべきだ」というのを僕はよく「呪い」と表現しています。

哲学研究者の近内悠太さんが定義したところによると、呪いとはその人から行動と思考の自由度を奪う言葉なんですね。調べてみたら、「憑きもの落とし」をする陰陽師は呪いを解くこともあるのですが、呪いは必ず言葉でかけるものなので、解くときも言葉で解くんです。

呪いは脳に仕掛ける時限爆弾みたいなもので、ある状況になるとそれが発動して「自分にはこれができない」「これをしなくちゃいけない」と思って自由度を奪われてしまいます。

自分の思い込みに揺さぶりをかける

山口:経営においては、選択肢=オプションが狭まることはもっとも避けるべき悪手です。これは人生の経営戦略でも同じで、より多くのオプションを持っていることは大事なのです。

――「~すべきだ」という呪いにかかっていると、選択肢が狭まるのですね。自分にかかっている呪いに気づくにはどんな視点を持てばいいのでしょうか。

山口:一つは、いろいろなインプットをすることです。リベラルアーツのリベラルとは「自由」の意味で、思い込みや常識から自由になるということなんです。自分の思い込みに揺さぶりをかけるためには、別の考え方をインプットして、自分の考え方を相対化するのがいいと思います。

(※この記事は『人生の経営戦略』を元にした書き下ろしです。)