新NISA制度が始まり資産運用が国民的な関心として広がるなか、「金融についてイチから学びたい」という声が高まっている。「お金について一度も学んだことがないのに、いきなり投資を始めるのは不安だ」と思うのは当然だ。金利、インフレ、ローン、株、為替――ニュースをつければ毎日耳にする言葉だが、「実はよくわかっていない」という人も多いのではないだろうか。そんな人におすすめの1冊が、金融の基本を60分で学べる『アメリカの子どもが読んでいるお金のしくみ』だ。アメリカで子どもから大人まで絶賛の声が絶えない本書から、特別に一部を抜粋して紹介する。
素朴すぎて意外と答えられない経済への疑問
ガソリンや食べものなどの値段はなぜ変わり続けるのだろう、と思ったことはないかい?
会社の経営者は売る商品やサービスの値段をいくらにすることもできるけれど、値段を決めるときに影響するのが、需要と供給だ。
需要とは、人びとが商品やサービスを欲しい、買いたいと思うことで、供給とは商品やサービスがどれだけあるか、またはどれだけ簡単に手に入れられるかということだ。
ふつう、需要が供給よりも多い状況を不足と呼び、不足によって値段は高くなる。
私たちは、どうしても必要なものや欲しいもの、とくに不足しているものに対して、より多くのお金を払ってでも買おうとする。
だから需要が多くなれば値段が上がるというわけだ。
逆に、みんなが欲しい、必要だと思う以上に商品が多いとき、つまり供給が需要よりも多いときには、余剰が出て、値段は下がる。
売り手は、値段を下げてでも買ってもらおうとすることが多いので、余剰が出ると価格が下がるわけだ。
需要と供給が同じなら、ほとんどの場合、値段はあまり変わらない。
チケットの値段も、スマホの値段も
需要と供給の変化が値段にどう影響するのかいくつかの例を見てみよう。
・ サッカーやバスケットボール、野球などのメジャーなスポーツの優勝決定戦を競技場で見たいと思うファン(需要)はたくさんいる。競技場の席の数は限られているので、チケットの数(供給)は決まっている。だから、チケットの値段は上がる。
・ iPhoneの最新モデルが発売されると、多くの人が新しいモデルを買うため、古いモデルの需要は少なくなる。だからiPhoneの古いモデルの値段は下がる。
・ 火事になればガソリン工場を閉めなければならなくなる。すると需要を満たすのに十分なガソリンが作られないため、ガソリンの供給が少なくなる。だからガソリンの値段が上がる。
・ お天気が良いのでブドウが1年を通してたくさん育つ。そのため、人びとがふだん買うよりもたくさんのブドウがお店にならぶ。だからブドウの値段が下がる。
需要と供給についてよく知っていれば、お金を使うときに上手な選択ができる。
ある商品の需要がまだとても多いことがわかっているならば、需要が少なくなるのを待つことを考えてもいいだろう。そして後で値段が下がったときにそれを買えばいい。
たとえば、君たちがスマホを持っていて、新しいモデルが出ることを知ったとしよう。
需要がとても多いときに、新しいスマホを一番高い値段で買う必要は本当にあるだろうか? スマホを新しくするのは、本当に買い替えが必要になるまでもう少し待つことはできるだろうか?
映画を見るとしたら、チケットが昼間よりも高くてしかも混んでいる夜に行くかい?
需要と供給の意味を学べば、お金を貯めてかしこく買いものをするのに本当に役に立つはずだ。
(本稿は『アメリカの子どもが読んでいるお金のしくみ』から抜粋・編集したものです。)