ミャンマーの民主化指導者アウンサンスーチー氏が1989年7月20日、初めて国軍による軟禁下に置かれたとき、息子で次男のキム・エアリス氏はその場にいた。当時12歳のエアリス氏にとって、それは冒険映画の世界に入り込んだような感覚だった。怖くはなかったが興奮したという。ヤンゴンの湖畔に家族が持っていた家に国軍兵士が押しかけ、電話線を切断したうえ、敷地の周囲に有刺鉄線をぐるりと張り巡らせた。成長するにつれ、遠く離れた英国で暮らす彼は、家族が直面する危険を理解し始めた。彼の母親はその夜以降、拘束と解放のサイクルを繰り返し、彼の青春時代の大半の間、ミャンマー軍に自由を奪われたままだった。スーチー氏は後の選挙で勝利し、ミャンマーの指導者(国家顧問)になったが、2021年2月1日の軍事クーデターで政権は転覆。現在78歳の同氏は再び収監され、数十年に及ぶ刑に服している。