現代人は「慢性的で容赦ないストレス」に押しつぶされ、頭も肉体も、そしてメンタルも疲れ切っている。私たち人間が本来持つ「エネルギー」を取り戻すには、どうすればよいのだろうか? 本連載では、スタンフォード大学で人気講義を担当し、億万長者の投資家、シリコンバレーの起業家、アカデミー賞俳優のコンシェルジュドクターでもあるモリー・マルーフの著書『脳と身体を最適化せよ!──「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』から人生最高の時期を引き延ばし、生活の質を最大限に高め、幸福度を増し、慢性疾患の発症リスクを下げる「最新の健康法」を紹介する。

【医者が教える】ヤバい脂肪ワースト2は「植物油」、ではワースト1は?Photo: Adobe Stock

最悪な脂肪──「トランス脂肪」

 トランス脂肪(トランス脂肪酸)は百害あって一利なしだ!

 人工のトランス脂肪―液状の植物油に水素を添加して固形油脂をつくる際に生成される―が心疾患の原因となる明確なエビデンスがある。

 そのエビデンスがあまりに圧倒的なため、政府は食品各社にトランス脂肪を段階的に減らすよう要請している。

 トランス脂肪を確実に避けたければ、植物性ショートニングを使った焼き菓子(マフィン、パイ、ペストリー、ケーキ)、電子レンジでつくるポップコーン、マーガリン、ファストフードの揚げ物(チキンフィンガーやフライドポテトなど)は避けるべきだ。

気をつけるべき脂肪──「植物油」

 摂取量に気をつけるべき脂肪がひとつあるとすれば、それは植物油だ。

 植物油自体は必ずしも有害ではなく、多くの人が言うほど健康にとって問題だとは思わない。

 だが、植物油の過剰摂取や、酸敗した植物油(抽出中や保管中、あるいは揚げ油として繰り返し使用する間に劣化した油)の摂取が健康に及ぼし得る悪影響については注目する必要があるだろう。

 現在の植物油は、高度に精製され工業的に加工された食品だ。

 100年前、植物油が米国人の食事に占める割合はほんのわずかだった。

 しかしいまでは、大豆油、キャノーラ油、綿実油(めんじつゆ)、コーン油をはじめとする工業的に製造された植物油から、当時よりはるかに大量のカロリーを摂取するようになり、毎日500キロカロリー超(摂取カロリー全体の約20%)を植物油から摂取している。これは相当な量だ。

 世界全体で見ても、植物油の生産量は、鶏肉・牛肉・チーズ・バターを合わせた生産量を上回っている。

 植物油は米と小麦に次いで、世界で最も消費されている食品なのだ。

 また、消費されている植物油の多くが、工場での加工や、保管状態の悪さ、揚げ油としての繰り返しの使用による酸化が原因で酸敗しているため、健康にさらに悪影響を及ぼしている。

 揚げ物はおいしいが、身体に最も悪い食べ物のひとつだ。

 ファストフードやチップスなどの加工スナック食品については、健康への悪影響は主に加熱した植物油の摂取によるものと考えられる。

 こうした食品が健康に良くないことは周知のとおりだ。

 では、キャノーラ油などの植物油自体が健康に有害なのだろうか。おそらくそうではない。

 だが、植物油を過剰に摂取したり、揚げ物を食べたり、超加工スナック食品やファストフードをドカ食いしたりするのは、間違いなく身体に悪い!

 料理には植物油の代わりにオリーブオイルやアボカドオイルなどの果実油を使うことをお勧めする。

 果実油は、オメガ6多価不飽和脂肪酸の含有率がはるかに低くコレステロールに良い影響を与える一価不飽和脂肪酸の含有率が高いため理想的だ。

 私はこれに加えて、ココナッツオイル、ダックファット(鴨脂)、牛脂、ラードも使っている。ただ、(すべての油と同様)使用する量は控えめにしている。

 また、オリーブオイルを1日当たりテーブルスプーン半分以上摂取する人は、オリーブオイルをまったく摂取しない人と比べて心血管疾患リスクが14%低く冠動脈心疾患リスクが18%低いことが複数の研究で明らかにされている。

 ただし、市場には低品質のアボカドオイルやオリーブオイルもたくさん出回っているので、必ず信頼できるブランドのオイルを買うようにしよう。

(本記事は『脳と身体を最適化せよ!──「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』から一部を抜粋・改変したものです。)