ビルと尹錫悦不動産プロジェクトファイナンスの不良債権問題を尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は切り抜けられるか Photo:Bloomberg/gettyimages

韓国の建設業界で規模8位のロッテ建設は今月7日、国内4大都市銀行と産業銀行、キウム証券などの参加により、2兆3000億ウォン(約2590億円)規模のABCP(資産担保CP)買い入れファンドを造成したと発表した。この一報に、韓国の金融・建設業界では多くの人々が胸をなで下ろすが、韓国を襲う「激震」の予兆が消えたわけではない。その理由を明かす。(大韓金融新聞東京支局長 金 賢)

不動産PFの不良債権化に戦々恐々
「国家経済を揺るがす雷管になりかねない」

 韓国では昨年来、不動産プロジェクトファイナンス(PF)の不良債権化が顕著となり、「国家経済を揺るがす雷管になりかねない」と懸念されている。不動産PFの残高は130兆ウォン(約14兆6000億円)であり、そのうち最大50%程度が不良債権化しかねないとする見方がある。一方で、さらに深刻な見積もりも出ている。

 韓国建設産業研究院が1月23日に明らかにしたところによれば、130兆ウォンという数字にはPF流動化証券と相互金融機関であるセマウル金庫からの貸し出しは含まれておらず、これらを合わせると202兆6000億ウォン(約22兆8000億円)に膨らむというのだ。

 仮にPF残高の50%が不良債権化するならば、日本円にして11兆円以上という極めて深刻な数字になる。

 これまでのところ、PF債権の満期延長が繰り返されるなどして、一気に破裂する事態は回避されてきた。しかし、一昨年来の金利引き上げで、ただでさえ8~9%と高めに設定されていたブリッジローン金利は20%水準まで上昇しており、いつまでも同じやり方を続けてはいけない。先月には業界16位の中堅ゼネコン・泰栄(テヨン)建設の私的整理(ワークアウト)が決定し、いよいよ地獄の釜のふたが開くかと関係者を戦々恐々とさせているのだ。

 そして、ソウル汝矣島(ヨイド)の金融街で「泰栄の次」とささやかれていたのがロッテ建設だったのだが、今回のファンド造成でどうにか息をつないだ形だ。しかし韓国の金融・建設業界には、問題はまだ「始まったばかり」とみる向きが多い。