みなさんは、世の中のちょっとした変化に敏感でしょうか。
数字に強い人は、ちょっとした変化に「違和感」を感じ、自分で仮説をたてて、その理由を数字で考えていきます。
経営コンサルタントとしてこれまで2000社の財務分析、1000人以上のビジネスパーソンに会計セミナーを実施してきた平野薫氏は、①世の中の事象に違和感を持つ→②違和感にフォーカスする→③自分なりに仮説を立てる→④数字で根拠を分析し検証する→⑤人に話したりブログに書いてアウトプットする、という一連のルーティンを日々継続して行うことが数字に強くなるコツだと言います。まずは、「違和感」を放置せずフォーカスすることが大切なのです。
本連載では、「世の中のふとした疑問を数字で考えるエピソード」が満載の話題の書籍『なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか?』から一部抜粋し、数字に強くなるエッセンスをお届けします。
週末のオフィス街はゴーストタウン
東京都千代田区にある勤務先近くのコンビニ、ポプラが閉店しました。セブン&アイ・ホールディングスの本社のすぐそばという大胆な立地に所在しており、近隣のセブンイレブンと比較してレジが混まないため個人的には重宝していた店舗です。
このポプラ、かつては24時間年中無休でしたが、閉店前には深夜と週末の営業をやめていました。ポプラは元々営業時間に対しては柔軟に対応するチェーンですが、この営業時間の短縮は都心部にある他のチェーンにとってきっと羨ましく感じたと思います。
夜は眠いし週末は家族と過ごしたいから休みたいという単純な理由ではありません。それは深夜と週末に人が居なくなり、売上が激減するからです。
なぜなら、日中の都心は通勤・通学でたくさんの人で賑わいますが、夜になると自宅のあるベッドタウンに帰ってしまうからです。週末の丸の内のオフィス街は今でこそ商業施設ができ多少の人出はありますが、かつてはゴーストタウンのようでした。
千代田区の人口は夜間に17分の1になる
日中と深夜ではどれくらい人口に変化があるのか? 国勢調査で通勤・通学で移動した人も含めた昼間人口(常住人口-流出人口+流入人口)と、自宅がその地域にある人の夜間人口(常住人口)の統計を調査しています。
下記の表は東京都全体と特別区部(23区)、区部の中で昼夜間人口比率の高い2区と低い2区を抜粋加工した資料です。東京全体で見ると、昼夜間人口比率は119.2と昼間人口の方が多いことが分かります。
私は埼玉県に住み東京の会社に勤務するいわゆる埼玉都民ですが、同じように居住地は都外で仕事や学校だけ東京という方が多いということですね。
特別区部(23区)で見ると132.2と傾向は顕著になりますが、23区の中でも差は大きいです。
昼夜間人口倍率が圧倒的に高いのは予想通り千代田区の1753.7です。なんと夜間人口が昼間の人口の約17分の1まで急減します。日中の千代田区は結構な人口が活動していますが、そのほとんどが千代田区外からの通勤・通学者であり、居住している人(夜間人口)は23区内で一番少ないです。練馬区の10分の1にも満たない夜間人口です。
中央区が千代田区に次ぎますが、その差は圧倒的ですね。一方の江戸川区や練馬区は昼夜間人口比率が100を切っており、ベッドタウンとして機能していることが分かります。
都道府県ごとの昼夜間人口比率を見ても東京、大阪に周辺から通勤しているのがよく分かりますね。
千代田区で見れば深夜帯になって人口が17分の1に急減する上に、深夜は一般的に買い物に行く頻度は下がります。そう考えると、千代田区のコンビニの夜間や週末の売上は相当少ないはずです。
24時間営業を巡っては人手不足の問題もありコンビニ本部とフランチャイズ加盟店の間で近年激しい攻防が繰り広げられていますが、都心のコンビニほど24時間営業はやめさせて欲しいというのが本音でしょう。
昨今はコンビニでも無人店舗の実証実験などが進められていますが、効率的な社会を作るためにも技術革新や法整備が進んで欲しいものです。
(本原稿は、平野薫著『なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか?』を抜粋、編集したものです)