働き方が多様化する現在、自分で会社を興してみたいと考えている人も増えているのではないでしょうか。実際、環境が変化したこともあり、昔に比べると小規模な起業はやりやすくなっています。日本で起業する人が多い業界といえば、サービス業と情報通信業です。IT業界は新しいビジネスモデルが生まれやすく、そして今や新しいサービス業をITと関係なく始めるのは難しいほどであり、今や「起業≓ネットベンチャー」とも言えます。本連載では、何回も会社を興した経験があり、今もメンターとして起業家の相談にのったり、ベンチャー企業への支援を行ったりする立場にある筆者が、約30年の経験を生かして、起業を志す人がやるべきこと、気を付けるべきことなどを伝えていきます。第一回は、起業は若者だけの特権ではないこと、そして「起業を志したらまずやるべき3つのプロセス」をお伝えします。(アンパサンドCEO 後藤康成)
ネットベンチャーが日本に登場してから
まだ30年も経っていない
日本におけるインターネットの歴史を振り返ってみると、30年前は商用化されておらず、ネットベンチャーも存在しませんでした。Yahoo! JAPANが設立されたのが1996年、楽天市場の設立が1997年です。
2000年代に入ると、多くの起業家がこの希望にあふれるインターネット産業に魅了されて起業し、雨後の筍(たけのこ)のようにさまざまなネットベンチャーが出現しました。2000年から現在までの間、多くの起業家がインターネットビジネスを起業しており、また今ではインターネットは既存産業に組み込まれる重要なテクノロジーとなっています。
筆者は1997年にエンジニアとしてシリコンバレーに渡り、ベンチャー企業で米国のOTC市場への株式公開を経験した後、インターネットインキュベーター(※)の「ネットエイジ」役員としてIPOを経験しました。その後自身で立ち上げたB2B SaaS企業「フィードパス」を2011年にYahoo! JAPANに売却しており、これまでの起業人生の中で2回の株式公開と1回のM&Aを経験しています。また、2012年から2014年まで、「ソフトバンクアカデミア」にて学長である孫正義のもと、帝王学を学びました。現在は、これまでのキャリアを生かして、キュービックグループの新規事業インキュベーターである「アンパサンド」で起業家の育成を行っています。
本連載では、筆者の起業家としての経験と、インキュベーターとして多くの起業家との出会い、これから起業を志す起業家予備軍に対して起業のプロセスを説明しながら起業の楽しさと辛さを伝えていければと考えています。
※インキュベーター…ベンチャー企業に対し、経営アドバイスや資金調達の支援などを行う団体、組織。