キリンが最高益!アサヒもサッポロも増収増益、「ストロング系」逆風下のビール3社は好決算Photo:PIXTA

2020年に始まったコロナ禍による落ち込みを脱した日本経済。ただ、元通りになったわけではない。デジタル化や脱炭素の潮流が加速し、円安や物価高の影響も続く。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回はキリンホールディングス、アサヒグループホールディングス、サッポロホールディングスの「ビール」業界3社について解説する。(ダイヤモンド編集部 宝金奏恵)

ビール3社とも増収
キリンは過去最高益

 企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下のビール業界3社。対象期間は2023年8~12月期の四半期(3社とも23年10〜12月期)としている。

 各社の増収率は以下の通りだった。

・キリンホールディングス
 増収率:10.2%(四半期の売上収益5865億円)
・アサヒグループホールディングス
 増収率:12.8%(四半期の売上収益7461億円)
・サッポロホールディングス
 増収率:6.2%(四半期の売上収益1409億円)

 外食需要が増えたことを受けて、ビール業界3社全てが増収となった。

 なお、原材料価格高騰の影響を受ける中、ビール業界に大きな変化をもたらしたのが、23年10月の酒税改正で、ビールは減税、発泡酒の税率は変わらず、一方で新ジャンル(第3のビール)は増税となった。

 また、健康志向が高まる中で、アルコール飲料に対する社会の風潮も変わりつつある。厚生労働省は2月19日に「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を公表し、飲酒に伴うリスクや適切な飲酒量などを周知していくとしている。

 これに足並みをそろえるかたちで3社は、アルコール度数が8%以上と高い「ストロング系」と呼ばれる缶チューハイなどの飲料の新規販売をやめる方針を決めたり、検討したりしている。

 こうした動きの中で、ビール業界も、ビール以外の商品や事業に注力しつつある。各社の増収の背景をみていこう。