30代で東証プライム上場企業の執行役員CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)となった石戸亮氏が、初の著書『CDO思考 日本企業に革命を起こす行動と習慣』(ダイヤモンド社)で、デジタル人材の理想的なキャリアについて述べています。
デジタル人材は、ビジネスの現場でどのように求められているのか。
本当に需要のあるデジタル人材として成長するためには、どんなスキルを身につければいいのか。
デジタル人材を喉から手が出るほど欲している企業に迎え入れられ、そこで重用されるには、どんな行動を取ればいいのか。
本連載では、デジタル人材として成長するためのTo Doを紹介していきます。

【CDOの考え】読んだ本を血肉化する方法Photo: Adobe Stock

読書の「筋トレ」

 仕事が忙しい中、どうやって読書を習慣化するかは、なかなか難しい問題です。私自身、学生時代から社会人初期の頃までは正直言って読書が苦手だったのですが、それをうまく習慣化できたステップがこちらです。

①上司が読んでいる本を読む。これにより、上司と共通言語、共通のOSを持てるようになり仕事がスムーズに進みやすくなる
②読んだ本の中で実践できそうな箇所にマーカーを引いたり印をつけたりする
③マーカーや印をつけた中で5つ抜粋してスマホなり手帳なりに記録し、いつでも読めるようにしておく。ここに簡単な感想文もつけておくとベター
④抜粋したものを毎朝必ず読み返す
⑤週に1度、実践したことを振り返る
⑥これを1ヵ月から3ヵ月くらい継続してみる
⑦読書のペースや抜粋したものの実行は、心持ち「背伸び」を意識する。ただし無理のない範囲で

 今までに①~⑦をやった本は今でも頭の中に残っていますし、たまに再読もします。さらには、自分が後輩を持ったりメンバーを率いたりした時に、彼らにとって必要そうな局面で、自分が過去参考になった本やその引用をコピーなりで共有することで、「共通言語」にしたりできます。「教えることで教える人自身が育つ」という話は聞きますが、たしかに自分が育つ実感はあります。

 世の中に本をたくさん読んでいる人は大勢いますが、売れている本をなんとなく読んで満足、という人がほとんどではないでしょうか。でも読書というのは読んだ冊数ではありません。血肉化し、アクションを起こしてはじめて意味が生じます。内容を実行にまで移す。それがもし組織の変革にまで活かせるのだとしたら、それってすごく高いROI(Return On Investment/投資利益率)ですよね。そうなっていけば、1000円、2000円の本の価値は10万円、100万円にも跳ね上がります。

 ちなみに、私が今までで一番繰り返し読んだ本は、『リーダーを育てる会社つぶす会社(グロービス選書)』(ラム・チャランほか、英治出版)と『組織力を高める最強の組織をどうつくるか』(古田興司ほか、東洋経済新報社)と『人を動かす』(デール・カーネギー、創元社)の3冊です。1冊目は昇格や転職をするたびに読み返していますし、2冊目は組織づくりを考える時や悩んだ時に10回以上通読していると思います。3冊目は20代の頃に目次をコピーして手帳に入れて毎日見ており、いまだに読み返すことがあります。

 実は①~⑦は、サイバーエージェント時代の私の実体験に基づいています。
 ①の「上司」とは当時の私の上司で、サイバーエージェントに7年間在籍したうちの6年間、私の直属の上司だった石井洋之さんです。当時はCAテクノロジーという子会社の立ち上げ期で、石井さんはCAテクノロジーの社長、私は営業マネージャーでした。石井さんは現在もサイバーエージェントの執行役員としてインターネット広告事業本部の営業を統括されています。まるでスーパーマンのような人で、毎週本を読んで学習しては確実にそれを実践する、本当に凄い人。私にも毎週本を渡し、感想文と実践できそうなことを書き出すようにと言われていたのですが、これが結構大変で……。毎週、ハードな筋トレをやっている気分でした。

 しかも石井さん自身も、勘弁してくれという勢いで成長していくので、追いつくのに必死。むしろ、見えなくなりそうなことが多々あり、石井さんの成長速度に追いつきたいのに、全然追いつかない。正直かなりしんどい状況だったのを記憶しています。石井さんは毎週末本を読んでいるものですから、月曜にまたパワーアップした上司と話すのはわりと憂鬱でした(笑)。

 やがて私は、その上司に追いつくべく、毎週金曜に石井さんが週末に何の本を読むか聞くようになりました。自分も同じ本を週末に読み、上司と思考をシンクロさせたかったのです。こうすれば彼の思考回路を自分に取り込めるはずだと。
 石井さんは当時、日曜日にジムに行っていたのですが、私もそのジムについて行って本の感想を聞いたりもしていました。彼が月曜のマネジメント会で読んだ本を発表する前に、その所感を聞きたかったのです。

 休日までくっついてくる部下なんて相当うっとうしいですよね。でも彼は嫌な顔ひとつせず、読んだ本についてあれこれ話してくれました。
 そういうことを試行錯誤しながら1~2年ほど粘り強く繰り返していたら、背中すら見えなかった上司の考えが、少しずつわかるようになってきました。激務に加えての課題読書はかなりつらかったですが、あの時に過酷なインプットの筋トレをやったおかげで、今では力の抜き方もわかります。

 読書にどれくらいの時間を使えるかは人それぞれですし、読んだ本すべてで①~⑦を実行するのは大変なので、まずは月に1冊くらいのペースでやってみてください。それでも年間12冊です。年間12冊ものペースで自分の成長に活かせる本が増えていくのは、なかなかすごいことではないでしょうか。

※本稿は『CDO思考 日本企業に革命を起こす行動と習慣』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。