もう一つの注目点は、「『こども未来戦略』における実質的な社会保険負担軽減効果」が記載されたことである。まず、23年12月22日に閣議決定した「こども未来戦略」の脚注27では雇用者報酬の伸びを医療・介護の給付の伸びが上回るギャップにより、保険料率が上昇していると触れられており、「若者・子育て世帯の手取り所得を増やすためにも、歳出改革と賃上げによりこのギャップを縮小し、保険料率の上昇を最大限抑制する」と記載されている。
他方、25年度から28年度までの算定方法は別途検討するものの、冒頭の合意事項では、23年度と24年度は、医療介護の現場従事者の賃上げによる医療保険料負担増などについては、追加的な社会保険負担額の増加分とは見なされず、控除することが記載された。
つまり、保険料率の上昇抑制により、医療従事者の賃上げ分などの例外的な場合を除き、医療介護の社会保険負担増は、可能な限り雇用者報酬の伸びの範囲内に抑制することが求められている。社会保障の給付と負担はリンクしており、社会保障予算に関する新たなルールが構築されつつある。
(法政大学教授 小黒一正)