英語を勉強しているが英会話上達を実感できない――そんな人に試してほしい1冊が『中学英語だけで面白いほど話せる!見たまま秒で言う英会話』だ。「イラストを見る→見たままを英語にする」を繰り返すことで、日本語を介さずに瞬時に即答する「英語の反射神経」を鍛えることができる。英語で話す力を養うための最適な英語学習書だ。本稿では著者の森秀夫さん(麗澤大学外国語学部教授)に「英語習得に要する学習時間」について話を聞いた。
英語でコミュニケーションをとるために必要な英単語の数
――森先生は本書の中で、英語学習で最も重要なことは、知識として覚える作業ではなく、覚えた英語を使う練習だとおっしゃっていますね。多くの人が、学生時代にたくさんの英単語を暗記した経験があると思いますが、学生時代に学ぶ英単語の数は、ネイティブとスムーズにコミュニケーションをとるうえで十分な数だと思いますか?
森秀夫(以下、森):たとえば、成人の英語ネイティブ・スピーカーは約2万語を知っているようですが、そこまで知らなくても日常のコミュニケーションに支障はありません。
なぜならば、英語では最も頻度が高い3,000語が一般的なテキストの95%を占めると言われているからです。
つまり、最も頻度の高い3,000の英単語を4つのスキル(読む、聞く、書く、話す)で使いこなすことができれば、ネイティブとスムーズにコミュニケーションを図ることができるのではないでしょうか。
ちなみに、数年前までの学習指導要領で目標とする英単語数は、中学校1,200語、高校1,800語の計3,000語でした。
現行の学習指導要領では、小学校600語~700語、中学校1,600語~1,800語、高校1,800語~2,500語で、合計すると4,000語~5,000語になります。
理論的には、現在の小中学校の教科書に掲載されている最大で2500語の英単語を使いこなせるようになれば、日常生活に大きな支障がないレベルの英語力が身につくと言えるのかもしれません。
ネイティブ・スピーカーが英語習得に要する時間
森:とはいっても、英語を覚えることと、それを使いこなせることは全く別物です。使いこなせるようになるためには、多くの時間を要します。
英語のネイティブ・スピーカーの子どもは、4歳くらいまでに英語の基本的な文法を習得すると言われています。
英語に触れている時間を1日当たり12時間と見積もると、4歳までに17,520時間を費やしているとも言えます。
一方で日本人は、小学校の4年間、中学校3年間、高等学校の3年間を合わせると、10年で英語の授業時間は約1,000時間にしかなりません。1年間で約100時間ですから、1日に換算すると、約16分の学習時間になってしまいます。
もちろん、自習や受験勉強の時間は含まれていませんので、16分というのは大げさかもしれませんし、これらの数字を単純に比較することはできませんが、英語を習得しようと考えたら、学校の授業だけでは全く足りないことはわかっていただけるかと思います。
日本で英語を習得した人の学習時間は?
――日本にいながらにして、英語でコミュニケーションがとれるようになる人もいますが、そのような人は、どの程度学習をしているのでしょうか?
森:あるデータによると、学校での英語の授業時間を含めて、3,000~5,000時間以上は英語に費やしているようです。
これは、毎日最低3時間を英語に費やしても、3~5年かかる時間です。
実は多くの英語学習者にとって、話せるようにならない根本的な原因は、英語のトレーニング時間が絶対的に短いことにあるのです。
ここで「トレーニング」としたのは、英単語を覚えたり、英文法を理解するインプットの学習にとどまらず、覚えた英語をアウトプットする時間の確保が英語習得には不可欠だからです。
――英語のトレーニングに費やす時間を増やすコツはありますか?
森:2つのことを意識するといいでしょう。「毎日コツコツ続けること」と「一定期間集中して取り組むこと」です。
たとえば、NHKのラジオ英語講座を毎日15分聞いて、15分間シャドウイングするというように、毎日続けられる習慣を作ることが必要です。
さらに、長期休暇がある人は、一定期間、集中して英語漬けとなって英語を学ぶことも非常に大切なことと言えます。
参考文献:
『英語学習の科学』(中田達也・鈴木祐一編、研究社)
『日本人のための英語学習法』(里中哲彦、筑摩書房)