2020年に始まったコロナ禍による落ち込みを脱した日本経済。ただ、元通りになったわけではない。デジタル化や脱炭素の潮流が加速し、円安や物価高の影響も続く。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は丸井グループ、三越伊勢丹ホールディングス、J. フロント リテイリングなど「百貨店」業界5社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
百貨店業界5社の3Q決算で
丸井だけが「減益」のワケ
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の百貨店業界5社。対象期間は2023年8~12月の四半期(J. フロント リテイリングと高島屋は23年9~11月期、その他3社は23年10~12月期)としている。
各社の増収率は以下の通りだった。
・丸井グループ
増収率:9.7%(四半期の売上収益584億円)
・三越伊勢丹ホールディングス
増収率:6.2%(四半期の売上高1533億円)
・J. フロント リテイリング(大丸松坂屋、パルコ)
増収率:8.1%(四半期の売上収益949億円)
・高島屋
増収率:3.9%(四半期の営業収益1130億円)
・エイチ・ツー・オー・リテイリング(阪急阪神百貨店)
増収率:3.8%(四半期の売上高1769億円)
百貨店業界の5社は、いずれも四半期増収率がプラスとなった。
また、この5社は第3四半期累計の売り上げ(売上収益、売上高、営業収益)も前年同期の実績を上回った。さらに、第3四半期累計の利益面に目を向けると、三越伊勢丹ホールディングス(HD)は営業利益、高島屋とエイチ・ツー・オー・(H2O)リテイリングは、営業利益・最終利益が「過去最高」を更新した。この3社は、23年度の通期業績予想を上方修正するなど絶好調である。J. フロント リテイリングも、両指標ともに増益で着地した。
新型コロナウイルス感染拡大に伴う業績への大打撃は、もはや過去のものになりつつあるようだ。
しかし、今回分析対象とした5社の中で唯一、丸井グループは営業利益・最終利益(第3四半期累計)がいずれも減益に沈んだ。5社そろって好調に転じたかに見えた百貨店業界に、思わぬ「格差」が生まれた理由は何なのか。
次ページ以降では各社の増収率の推移を紹介するとともに、その要因について詳しく解説する。