値上げラッシュによる消費者の節約志向と人件費高騰で小売業界は苦境に陥っている。特に地方百貨店は厳しい環境にあり、上位に複数ランクインした。値上げラッシュは食品だけでなく、資材でも起こっている。大きなダメージを受けたのがホームセンターだ。特集『倒産危険度ランキング2024&初公開!企業を倒産させた金融機関ランキング』の#21では、小売業界で“危険水域”と判断された14社を紹介する。(ダイヤモンド編集部 下本菜実)
そごう・西武売却劇の裏で
伊勢丹新宿店は「バブル期超え」
2023年8月31日、東京・池袋駅東口の広場には、プラカードを掲げながら必死に声を張り上げる人々の姿があった。「これからもお客さまと共に…」。横断幕にはこんなメッセージが書かれている。
閉ざされたシャッターの前に集まったのは、西武池袋本店の社員や契約社員ら。この日、そごう・西武の労働組合員900人は大手百貨店で61年ぶりとなるストライキを行ったのだ。
22年、親会社のセブン&アイ・ホールディングスは、業績の低迷が続くそごう・西武の株式売却を決定した。その後、テナント改装案を巡って、セブン&アイとそごう・西武の労働組合は決裂。ストライキにまで至ったが、労働組合側の要求が受け入れられないままに、翌9月1日にそごう・西武の株式は譲渡された。
一方で、アフターコロナの訪日観光客増加と円安で、インバウンド需要に沸く百貨店もある。三越伊勢丹ホールディングスは23年3月期の決算で、296億円の連結営業利益を計上。これは、コロナ禍前である18年3月期の営業利益、292億円を上回る。
特に都内の店舗は好調で、伊勢丹新宿店の売上高は過去最高となる3276億円を突破。同社の細谷敏幸社長は会見で「バブル期超え」を強調した。
同じ百貨店でも明暗がはっきりと分かれたように、小売業の中でも扱う商品によって、状況はさまざまだ。例えば、ドラッグストアはコロナ禍で衛生用品の需要が拡大し、ホームセンターは木材価格高騰の影響を大きく受けている。直近の連結決算で、業績にダメージが表れたのはどこなのか。
ダイヤモンド編集部が小売関連業界の倒産危険度を調査したところ、14社が“危険水域”にあることが判明した。次ページでは、各社の実名と共に小売業界の倒産危険度ランキングを明らかにする。