2020年に始まったコロナ禍による落ち込みを脱した日本経済。ただ、元通りになったわけではない。デジタル化や脱炭素の潮流が加速し、円安や物価高の影響も続く。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は大塚ホールディングスやエーザイなどの「製薬」業界5社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
塩野義製薬が4割超の四半期減収
過去最高の上期決算から“急ブレーキ”
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の「製薬」業界5社。対象期間は2023年8~12月期の四半期(5社いずれも23年10~12月期)としている。
各社の増収率は以下の通りだった。
・大塚ホールディングス
増収率:14.3%(四半期の売上収益5395億円)
・エーザイ
増収率:マイナス5.3%(四半期の売上収益1777億円)
・協和キリン
増収率:18.8%(四半期の売上収益1362億円)
・塩野義製薬
増収率:マイナス43.3%(四半期の売上収益1063億円)
・小野薬品工業
増収率:7.3%(四半期の売上収益1312億円)
今回分析対象とした製薬5社の中では、大塚ホールディングスと協和キリン、小野薬品工業が増収、エーザイと塩野義製薬が減収と明暗が分かれた。後者の中でも、塩野義製薬は前年同期比で4割超の減収と苦戦ぶりが目立った。
だが実は、塩野義製薬は前年度(23年3月期)の通期決算において、売上収益・営業利益・純利益が「過去最高」を更新。その勢いのままに、今年度の上半期(24年4~9月期)の累計決算においても、これら3指標が「過去最高」を記録していた。
しかし、そこから一転。第3四半期累計の決算では、上半期の“貯金”を食いつぶし、減収減益に沈んでしまった。
塩野義製薬の業績は、なぜ坂道を転がり落ちるように不調に陥ったのか。
次ページでは、各社の増収率の推移を紹介するとともに、塩野義製薬が不振に陥った要因について詳しく解説する。