大分の施設の方からの手紙で、胃ろうを良しとするのも悪(あ)しとするのも施設次第です、というモノで、胃ろうを作ってもキチンと気にかけて口からのケアをしてくれるか否か。
母の入ってる施設の人たちと会話を続けて、口からのケアに心配りがされていると確認出来た事が、母の胃ろうに踏み切る最後の後押しをしてくれました。
数日個室を百合の薫りが包み、萎れた花びらを一輪切り取った頃、母の退院を告げられました。
明日母は退院します。
十日に満たない入院でした。
その間低い山に囲まれたこの街に春は訪れ、窓の外の山々は部分的な白髪をピンクに染めたお洒落なオバチャンのようです。
固く閉じた母の短い指のマニキュアはすっかり剥げ落ちています。
目の前で今母に胃ろうから栄養が注ぎ込まれる。
いつか母に胃ろうを付けた事を悔いる日が来るのだろうか。
(次回は4月11日更新予定です。)
西日本新聞社
『ペコロスの母に会いに行く』
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