ゴールドマン・サックスなど外資系金融で実績を上げたのち、東北楽天ゴールデンイーグルス社長として「日本一」と「収益拡大」を達成。現在は、宮城県塩釜市の廻鮮寿司「塩釜港」の社長にして、日本企業成長支援ファンド「PROSPER」の代表として活躍中の立花陽三さん。初の著作である『リーダーは偉くない。』(ダイヤモンド社)では、ビジネス現場での「成功」と「失敗」を赤裸々に明かしつつ、「リーダーシップの秘密」をあますことなく書いていただきました。リーダーだからといって「格好」をつけるのではなく、自分の「欠点」や「弱点」を素直に受け入れて、それをメンバーに助けてもらう。つまり、「リーダーは偉くない」と認識することが、「強いチーム」をつくる出発点だ――。そんな「立花流リーダーシップ」に触れると、きっと勇気が湧いてくるはずです。
「気が利く」という重要スキルを磨く
商売人(ビジネスマン)として成功するために大切な能力は何か?
それには実にさまざまなものがあると思いますが、僕が個人的にすごく大事だと思っている能力があります。
ちょっと小難しく言うと、「いま自分が置かれている環境・状況を俯瞰的に理解して、そこで自分が何をやればみんながハッピーになるかを考え、実行する能力」です。まぁ、要するに「気が利く」ということなんですが、これだけではよくわからないですよね? そこで、僕がたまたま遭遇したシーンを紹介しながら、具体的に考えてみたいと思います。
これは、僕が旅行したときに目撃した出来事です。
ある空港で昼食をとるために、小さな飲食店に入ろうとしたのですが、ランチタイムだったこともあって、20~30分ほど並んで、ようやく前から2組目にまで進むことができました。
ところが、店内を見て驚きました。というのは、カウンターのみ6席のお店なのですが、そのうち真ん中の2席にお客さまが座っているだけで、右端2席と左端2席の計4席が空席だったからです。僕の前に並んでいるのは3人家族(ご夫婦と赤ん坊)でしたから、両親のどちらかが赤ん坊を抱っこすれば、左右どちらかの2席にすぐに着席できるはず。ところが、若い店員さんは3人家族を案内する素振りすら見せませんでした。
どういうこと?
僕がそう怪訝に思った瞬間、前に並んでいるお父さんが、「空いてる席に座ってもいいですか?」と店員さんに聞きました。
1971年東京都生まれ。小学生時代からラグビーをはじめ、成蹊高校在学中に高等学校日本代表候補選手に選ばれる。慶應義塾大学入学後、慶應ラグビー部で“猛練習”の洗礼を浴びる。大学卒業後、約18年間にわたりアメリカの投資銀行業界に身を置く。新卒でソロモン・ブラザーズ証券(現シティグループ証券)に入社。1999年に転職したゴールドマン・サックス証券で実績を上げ、マネージング・ディレクターになる。金融業界のみならず実業界にも人脈を広げる。特に、元ラグビー日本代表監督の故・宿澤広朗氏(三井住友銀行取締役専務執行役員)との親交を深める。その後、メリルリンチ日本証券(現BofA証券)に引き抜かれ、数十人の営業マンを統括するも、リーダーシップの難しさを痛感する。2012年、東北楽天ゴールデンイーグルス社長に就任。託された使命は「優勝」と「黒字化」。星野仙一監督をサポートして、2013年に球団初のリーグ優勝、日本シリーズ制覇を達成。また、球団創設時に98万人、就任時に117万人だった観客動員数を182万人に、売上も93億円から146億円に伸ばした。2017年には楽天ヴィッセル神戸社長も兼務することとなり、2020年に天皇杯JFA第99回全日本サッカー選手権大会で優勝した。2021年に楽天グループの全役職を退任したのち、宮城県塩釜市の廻鮮寿司「塩釜港」の創業者・鎌田秀也氏から相談を受け、同社社長に就任。すでに、仙台店、東京銀座店などをオープンし、今後さらに、世界に挑戦すべく準備を進めている。また、Plan・Do・Seeの野田豊加代表取締役と日本企業成長支援ファンド「PROSPER」を創設して、地方から日本を熱くすることにチャレンジしている。著書に『リーダーは偉くない。』(ダイヤモンド社)がある。