よきリーダーとは何か――こうした議論は、これまでたくさんなされてきました。責任感がある人、目標に妥協しない人、決断ができる人……。 私は「よきリーダーとは気くばりができる人」だと思います。なぜ、リーダーに気くばりが必須なのでしょうか? 本稿では、リーダーシップと気くばりの関係について紹介します。
※本稿は、柴田励司『リーダーの気くばり』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を抜粋・編集したものです。
マネジメントはメンバーが最高の状態で働けるようにすること
優れたリーダーは自分のことは横に置き、チームを元気にすることを考えています。周りへの気くばりから仕事を始めます。
私がよく例に出す気くばりの話をしましょう。
朝、オフィスに入ってきたとき、リーダーは自分の仕事をさっさと始めるのではなく、いろんな人の顔を見たり、声をかけたりしながら周りのエネルギーを着火していきます。
無理にその場を盛り上げていこうというのではなく、あくまでも、その場の状況を把握して、相手を見て声をかけるのです。これはオンラインミーティングでも同じです。画面越しに映る表情を見て声かけをします。
メンバーが最高の状態で働けるようにする。これはリーダーの役目ですが、このためには、周りのメンバーから「この人と一緒に働きたい」と思われることが必要条件となります。
そう思われるための要素が2つあります。
1つは「この人みたいに仕事ができるようになりたい」という仕事上の尊敬を持たれること、もう1つは、「この人は自分を受け入れてくれている」という安心感を持たれることです。
AI時代には後者が特に重要です。「自分を受け入れてくれている」と感じてもらうには、その人の失敗も成功も全部受け入れます。私はこの状態を「開いている」と称しています。自分のほうが上であるとして威圧的に接したり、説き伏せたり、相手に心のうちを読ませないようにしようと自分の心に鎧を着せていてはいけません。
まずは自分を開くこと。ここが気くばりをするための原点になります。
気くばり上手な人には人が集まってくる
「文句を言わず言われたことをやれ」という求心型のマネジメントだと、言われたほうは、自分の想いや意思を殺すことになります。遠心型のマネジメントの下で気くばりがなされていると、各人が思ったことを発言し、自分の軸をもって仕事をしていけます。快適です。変なストレスはありません。
これは仕事のうえだけではなく普通の人間関係の付き合いの中でも同じです。
気くばりができるリーダーのもとには、「あの人の周りにいるといいよね、楽だよね」と人が集まってきます。