「巨大な中国市場がバックアップ」「八大センター化」
「安定したガバナンス」で株式市場が盛り上がるわけもない
彼らによると、香港市場は2021年5月以降わずか2年間のうちに17兆香港ドル(約324兆円)の資金が「蒸発」したといわれる。かつて中国の上場ブームに押し上げられてきたIPO(企業の新規株式公開)資金調達額も、昨年は世界トップ3から脱落しただけではなく、インドに抜かれて世界6位に転落している。
これに対し、中国政府系の論客が「香港は巨大な中国市場にバックアップされ、国家戦略に牽引(けんいん)され、八大センター化という位置づけで、安定したガバナンス下にある」と反論してみせたりもした。さらに「祖国にバックアップされ、世界につながること、それが香港独特の優位だ」という習近平の言葉まで引用して、「香港国際金融センター遺跡」論を否定した。
ここでいう八大センターとは、国際金融センター、国際海運センター、国際貿易センター、国際資産管理およびリスク管理センター、国際イノベーション・テクノロジーセンター、アジアパシフィック地区国際法律紛争解決サービスセンター、ブロック知的財産権貿易センター、中外文化芸術交流センターのことだ。だが、その多くが香港産業界にとってなじみのないもので、その実現性や実効性に疑問の声も上がる。
もちろん、個人的に損を被った投資家たちの憤懣(ふんまん)はそんなスローガンで一掃されるわけもなく、さらにはその後、「かつての国際金融センター」などと悪乗りした香港株式取引所付近の写真がネットにアップされたり、香港旅行を「遺跡見物」などと揶揄(やゆ)したりする人たちが続出している。
「中国政府や香港政府トップは批判に対してすぐに香港の『安定性』を強調するが、安定した株式市場でもうけることなんてできない。株価は波乱があってこそなんだよ」と、香港人金融コラムニストも説いている。