重要案件である“コロナ後の経済立て直し”は
中国政府に依存した政策ばかりを優先
それにしても、西洋人に「オワコン」と言われ、中国人にも「遺跡」と呼ばれるようになった香港で、出てきた対応策が「書き込み削除」とは……そう思ったのは筆者だけではないはずだ。
この挟み撃ちとも言える「打撃」に、香港庶民も反論の声を上げることができずにいる。というのも、2月28日には今年の財政予算案が発表されたが、コロナ以降悪化する財政赤字額が昨年、予想されていた額の2倍近くに膨れ上がったことが明らかになったのだ。
陳茂波・財政長官は、赤字対策として高額所得者への増税、たばこ税の引き上げ、そして一部土地開発計画のいったん停止などを発表した。だがその一方で、中国政府の肝いりで進められてきた中国・深センとの接近を図る「北部都会区開発」計画には全く手を付けず、予定通り推進すると宣言。さらにそれらの財源を集めるために今後、年間950億香港ドルから1300億香港ドルの債券を発行することを明らかにした。
これが、これまで「安定した財政」が自慢だった香港人に、「今後は借りた金で借金を返しながら暮らすのか」と不安を巻き起こしている。特に指摘されているのが債券の返済が始まるのが2027年以降、つまり陳財政長官の後任が就任してからだという点だ。
コロナ後の経済立て直しはどの国の政府も直面している大きな課題だが、香港がこれまで得意としてきた、あるいは優位となる説得力のある政策ではなく、人材不足や再開発計画も、また資金誘致にしても中国に依存した政策ばかりが優先されていることに、市民のみならず産業界も不安がにじむ。
そして、皮肉なことにそれこそが冒頭にご紹介したローチ氏の寄稿文が指摘している「中国要因」でもある。同氏が言うように中国経済の不景気はすでに明白であり、まだその中国に頼ろうとする香港政府高官による「自治能力不足」(ローチ氏の根拠・その2)も、証明されてしまった。