東南アジアではシンガポールが「独り勝ち」
米中関係の悪化が香港に及ぼす影響

 そして、ローチ氏は3番目の不安要素として「世界的要因」も挙げている。特に中米対立がもたらすネガティブ要素による影響は大きい。

 例えば、3月初めにシンガポールで行われたテイラー・スウィフトのコンサートに、同国政府が公演1回につき約270万ドル(米ドル、以下同)の補助金を出すことで独占契約を結んでいたことが暴露された。一方で、その経済効果は合計2億ドルから3億ドルに上るとみられ、シンガポールの「独り勝ち」に東南アジア各国は騒然となっている。

 シンガポールを「ライバル」とみなす香港でも、これは大きな波紋を呼んだ。しかし香港政府は、「コンサートは民間が誘致するもの。政府予算をつぎ込むことはしない」と“武士は食わねど高楊枝”ぶりを貫いている。一方でサッカーのメッシ選手誘致(https://diamond.jp/articles/-/338706)には1500万香港ドル(約190万ドル)を拠出しようとしていたのに……。

 それもこれも、米中関係のハードルが関係している。テイラー・スウィフトはやはり米国人歌手だからだ。さらに英国人歌手であるロッド・スチュワートまで香港で予定されていたコンサート開催をキャンセルしたことが大きなニュースになった。

 もちろん、公式な説明では政治面での理由は挙げられていない。しかし、現地関係者の誘致力(先見性)や経済力、そして政治などの問題が重なれば、主催者側も二の足を踏むのはビジネスにおいて自然なことである。

 だからこそ、香港をよく知るアナリストによる「香港は終わった」論には香港全体が震えた。だが、鼻息荒く香港政府高官が反論する「香港の優位」は、本当に実効性のあるものなのか。今、世界は本当の香港の実力を見守っているところといえるだろう。