米メジャーリーグサッカー(MLS)のインテル・マイアミが香港を訪れ、香港選抜チームと親善試合を行った。チケットは高額で売買され、香港はもちろん中国からもたくさんのサッカーファンを呼び込んだが、同チームの大スターであるアルゼンチン代表リオネル・メッシ選手&ウルグアイ代表のルイス・スアレス選手は欠場した。観客席から「カネ返せ」の怒号が飛び出し、香港政府は大慌て。怒る中国人ファンの一方で、香港人からは冷ややかな笑いが……(フリーランスライター ふるまいよしこ)
メッシ人気で、親善試合のチケットは1万7000円→209万円!?
2月2日、あのデビッド・ベッカム元選手が率いるサッカークラブ「インテル・マイアミCF」(以下、インテル・マイアミ)が香港を訪れたというニュースを目にして、脳裏にサッカーファンの友人夫婦の顔が浮かんだ。予想通り、翌3日にはこの夫婦のフェイスブックアカウント上に、ピンク色のクラブカラーシャツを着てコートを歩く超人気選手リオネル・メッシの小さな姿を背景に2人がピースサインをしている写真がアップされていた。この日は公開練習で、2人は1枚780香港ドル(約1万5000円)のチケットを手に入れて参加したという。
彼らによると、この日のメッシは練習が始まる前に子どもたちと一緒にボールを蹴ったり、練習中にもコートを歩く颯爽とした姿を見せたりしたという。その後の騒ぎの後、彼がつぶやいた。「オレたち、たった800ドルでメッシの姿を見られたんだからな、お得だったな」。
「その後の騒ぎ」が何か、ご存じの方もいるかもしれない。2月4日に行われたインテル・マイアミと香港選抜チームとの親善試合に、メッシもルイス・スアレス選手も出場せず、ファンから「カネ返せ!」の怒号が飛び交ったのだ。
親善試合のチケットは昨年12月15日に売り出された当初は最低価格が1枚880香港ドル(約1万7000円)、最高額は4880香港ドル(約9万2000円)だったが、約1時間で完売。1月末に改めて残りのチケットが発売された際の最低価格はなんと2880香港ドル(約4万3000円)だった。ネット上での転売価格は最高11万香港ドル(約209万円)にまで跳ね上がったという情報もある。
もちろん、人気絶頂のサッカー選手・メッシが香港を訪れるとあって、香港特別行政区政府もその観光イメージに結びつけようと熱心に宣伝に協力した。宣伝ポスターではメッシやスアレス、セルヒオ・ブスケツ選手、ジョルディ・アラバ選手などスター選手たちを全面に押し出したので、香港だけではなく中国のサッカーファンからの注目も集め、中国からもお金に糸目をつけないサッカーファンが香港に押しかけた。
ところが、肝心のメッシは親善試合の間中、ベンチに座ったままプレーしなかった。失望した約3万8000人の観客は、試合後に挨拶したベッカム代表に激しいブーイング。慌てた会場側からは「ベッカム氏にリスペクトを」と呼びかける放送も流れたが、「カネ返せ!」の激しい抗議の声がそれをかき消した。
インテル・マイアミのヘラルド・マルティーノ監督は試合後記者会見し、メッシ選手は筋肉に炎症があり、またスアレス選手も前訪問地のサウジアラビアでヒザを痛めていたことが原因だったと述べた。「ちょっとだけ出場させることも考えたが、我々の医療チームはリスクが大きすぎると判断し、2人を出場させないことを決めた」と健康上の問題であることを強調した。