みなさんは、世の中のちょっとした変化に敏感でしょうか。
数字に強い人は、ちょっとした変化に「違和感」を感じ、自分で仮説をたてて、その理由を数字で考えていきます。
経営コンサルタントとしてこれまで2000社の財務分析、1000人以上のビジネスパーソンに会計セミナーを実施してきた平野薫氏は、①世の中の事象に違和感を持つ→②違和感にフォーカスする→③自分なりに仮説を立てる→④数字で根拠を分析し検証する→⑤人に話したりブログに書いてアウトプットする、という一連のルーティンを日々継続して行うことが数字に強くなるコツだと言います。まずは、「違和感」を放置せずフォーカスすることが大切なのです。
本連載では、「世の中のふとした疑問を数字で考えるエピソード」が満載の話題の書籍『なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか?』から一部抜粋し、数字に強くなるエッセンスをお届けします。
なぜ街全体は寂しくなってきているのに、塾は増えているのか?
前回の連載でお伝えした通り2023年の出生数は、75万人になりました。団塊の世代のピークで約269万人(1949年)、第二次ベビーブームのピークで約209万人(1973年)だったことを考えると本当に少子化が進んでいることが分かります。
私の生まれ故郷は宮城県の古川という街です。他の地方の街と同様、ご多分に漏れず少子高齢化が進んでいます。私の通っていた小学校も近隣の3つの小学校と統合し、遠方の児童はスクールバスを使って通学しています。
しかしそれだけ少子化が進んでいるにもかかわらず、帰省時に感じるのは以前と比べて街全体は寂しくなってきている中で塾が増えたということです。思えば出張でいろんな場所に行っていますが、コンビニさえろくに無いような場所でも意外と塾を見かけます。
なぜ教育産業の市場規模は拡大しているのか?
矢野経済研究所の調査によると、教育産業全体の市場規模はコロナで一時的に落ち込んだものの、その後は堅調に拡大しており今後も堅調に推移していくことが予想されています。
少子化が進み、これだけ子どもの数が激減しているにもかかわらず、なぜ教育産業の市場規模は拡大しているのでしょうか?
その理由は少子化が進んだことで子ども1人にかける教育費が増加しているためです。
15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計した合計特殊出生率は、ピークだった1947年の4.57人から2022年には1.26人まで低下しています。つまり一家で養わないといけない子どもの人数がかつての4分の1程度にまで低下しているわけですね。私が生まれた1978年でも出生率は1.79人。当時と比べても現在は、約3割少ないです。その分、1人の子どもに掛けられる教育費は増えています。
祖父母からの援助も教育費の大きな支え
また、現代においては祖父母からの援助も教育費の大きな支えになっています。
ソニー生命が発表した「子どもの教育資金に関する調査2023」によると、教育資金として子どもの祖父母からこれまでに受けた資金援助の平均は104万円となっています。経年調査ではないため、過去との比較はできませんが、過去と比べると増加傾向にあると考えられます。
これまで人口ピラミッドの形が正常な三角形だった時代には若年層比率が高く、自分世代、子ども世代でそれぞれ2人の子どもが生まれれば、祖父母になった際に4人の孫がいました。しかし、少子化が進み各世代で一人の子どもしか生まれなければ、祖父母になった際に1人の孫しかいません。
子ども1人に対して、両親・両祖父母の合計6人の財布(経済的なポケット)があることを6(シックス)ポケットと言いますが、教育資金についてもこの影響は大きいと思います。
「子どもの教育資金に関する調査2023」によると、学校以外での平均教育費は増加傾向が続いており、小学生から社会人になるまでに必要な教育資金の平均予想金額は1436万円と、調査開始以来最高額になったようです。
我が家でも昨年長女の中学受験を経験し、塾の費用を知って愕然としました。可愛いわが子のためであれば、やむを得ない支出だと思いながらも教育費負担が少子化に影響していることを実感しました。
(本原稿は、平野薫著『なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか?』を抜粋、編集したものです)