3月18日~19日の金融政策決定会合で、日本銀行はマイナス金利の解除などを決定した。今回の利上げ局面は、直近2回の利上げとはある点で環境が全く異なる。実質ベースで指標を見ると、次の利上げシナリオは10月から早まる可能性も浮上する。(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)
金融政策正常化は“1合目”
「普通の金融政策」とは程遠い
日銀は3月19日に、マイナス金利解除、YCC(イールドカーブ・コントロール)廃止、ETFなどの購入終了を決定した。
日銀が言う「賃金と物価の好循環」には危うさがあるが(後述)、それらの政策は市場機能や資源配分を深刻にゆがめ、日本経済の成長を長期的には阻害していく政策だったため、歓迎すべき政策変更だったといえる。
記者会見で植田和男総裁は「普通の金融政策」に戻ったとアピールした。その説明に筆者は違和感があるのだが、それにより「金利のある世界」や「金利が変動する世界」への警戒心を人々に早くから抱かせることが狙いならば意味があるだろう。
世界の大多数の国は、コロナ危機時に急拡大した財政赤字を正常化させつつあるが、わが国の2024年度予算の新規国債発行額は依然として巨額だ。無コストの資金調達は永遠には続かないことを政治サイドに認識してもらう必要がある。
同様のことは企業や家計に対してもいえる。金利の変動への警戒がなさ過ぎると、利上げが進むにつれてトラブルが続出してしまうからだ。後述するように、国内景気が脆弱でも日銀が利上げを続けなければならないケースもあり、注意が必要である。
ただし、金融政策正常化を登山に例えるなら、今は“1合目”であり、先行きはまだまだ長い。実際にはいまだ世界で最も異様な超緩和策が実施されており、「普通の金融政策」とは程遠い状況にある。具体的に見ていこう。